本研究では、心臓弁の開閉が起こるようなトポロジー変化が起きる空間を占める流体を、物体適合格子を用いて計算する手法を構築している。この方法は従来の信頼のある解析手法を損なうことなく同時にトポロジー変化も考慮できる方法で、トポロジー変化に特化した手法に比べ信頼性が高い。この方法による計算から、弁が閉じる際に流速は必ずしも徐々に小さくなるわけではないことが示されており、開閉時に生じる速度境界層を捉えることの重要性などがわかる。この事実から、他手法では議論しにくい開閉近傍の現象解明を数値計算により検証ができるようになっている。また赤血球を含む流体解析は多く場合、その影響度合いの高い毛細血管のような低速の箇所であるが、本研究では速度の高い領域での赤血球挙動を議論するために、Navier-Stokes方程式に基づく流体と赤血球の連成問題について取り組んだ。
計算手法の特徴より弁の上下面に対する壁面せん断応力を導出できるという特徴があり、空間解像度を挙げることでその収束を確認することができた。その際に時間解像度の重要さを知ることとなり、本計算に利用しているアイソジオメトリック離散化の空間解像度の高さを改めて認識した。より効果的な計算を実現するためにT-splineと呼ばれる非構造的取り扱いが可能なスプライン関数を利用するための仕組みを考案し、実現した。この際、接触解析としてこれまで活用してきた手法は、「接触点」を代表する点が1つであることが条件となっていたことから、T-splineにより非構造化した箇所については接続できないことがわかった。この点は今後の課題として残った。
|