研究課題/領域番号 |
18H04102
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近野 敦 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (90250688)
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研究分担者 |
佐瀬 一弥 東北学院大学, 工学部, 准教授 (20805220)
辻田 哲平 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (40554473)
安孫子 聡子 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40560660)
小水内 俊介 北海道大学, 情報科学研究院, 助教 (40708004)
陳 暁帥 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (40812277)
七戸 俊明 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (70374353)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 手術支援 / 手術シミュレーション / 技量評価 / 拡張現実 |
研究実績の概要 |
本研究は,腹腔鏡手術中のヒューマンエラーを未然に防ぎ,安全性を高めつつ手術を容易にする手術支援システムを開発することを目的とする.研究開発項目を大きく,1手術支援システムの開発,2アニマル実験での手術支援システムの評価,に分け,小課題として,1-1手術手技の定量的評価法の確立,1-2医用画像からの臓器モデル自動生成法の確立,1-3臓器変形・発生応力実時間推定,1-4臓器プロジェクションマッピング,2-1アニマル実験での手術手技の記録と解析,2-2臓器変形,発生応力実時間推定の実験・評価,2-3手術支援システムの評価・検証,を設けた. 2020年度は,1-4, 2-2, 2-3の小課題に取り組んだ.1-4ではカメラと人体に見立てた腹腔鏡下手術トレーニングボックスに赤外線反射マーカーを取り付け,カメラの位置・姿勢とトレーニングボックスの位置・姿勢をモーションキャプチャー装置で検出し,その相対関係から,トレーニングボックス内に配置した臓器に見立てたシリコンゴム直方体モデルの位置・姿勢を推定し,カメラの位置を動かしても精度良くシリコンゴム直方体モデルをトレーニングボックスに重畳表示する技術を開発した.この技術は,まるで身体の中が透けて見えるように内部情報を手術者に提示することに応用する.2-2では,肝臓,胆嚢,膵臓の有限要素モデルを作成し,腹腔鏡下手術トレーニングボックスでの手術器具の動きをモーションキャプチャー装置で検出し,その動きでコンピュータ内の肝臓,胆嚢,膵臓モデルに対して模擬手術を行う手術シミュレーターを開発した.2-3では,北海道大学医学部泌尿器科が定期的に実施しているカダバートレーニング(遺体を用いた手術手技研修)で,本研究で開発した赤外線反射マーカー付きの手術器具を使用してもらい,研修における手術器具の動作を記録し,精度良く動作を記録できていることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実時間計算可能な臓器および血管モデルの提案で1件,柔軟物体変形と力学提示の成果で1件,手術技量の測定と評価で2件,カダバートレーニングおよび腹腔鏡手術手技に関して12件の学術雑誌論文が掲載された.特に手術技量の機械学習を用いた評価に関する論文はIFが3.149のSurgical Endoscopyという腹腔鏡手術分野専門の医学誌に掲載された.また,手術技量の評価に関して,フルペーパー査読付き国際会議RoManSy2020で発表を行い,発表者のKoki EbinaがBest Student AwardのFinalistに選定されるなど,期待した成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2021年度は,これまで開発してきた手術支援システムの評価・検証を行う.評価・検証する項目は,(1) 臓器と手術器具の接触による変形予測の精度,(2) 臓器変形重畳表示の精度,(3) 手術手技定量的評価の精度,(4) 提示情報の妥当性,とする. 臓器と手術器具の接触による変形予測の精度検証については,単純な形状の柔軟物体で,動的有限要素モデルによる変形量と実験での変形量を比較し,定量的に評価する.また,特性パラメータに個体差を持つブタの臓器を用いて,変形予測と実際の変形量との誤差解析を行う. 臓器変形重畳表示精度の検証では,動的有限要素モデルを用いて実時間予測した結果を実際の映像に表示し,その表示誤差を定量的に評価する. 手術手技定量的評価制度の検証では,被験者が行う模擬手術の技量を熟練者が評価し,その評価と,模擬手術中の手術器具の動作からその技量をAIで自動判定した評価を比較する. ブタの臓器等を使った模擬手術で,一連の支援システムを評価し,提示情報が適切かなど全体としての評価を行う.
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