研究課題/領域番号 |
18H04118
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池井 寧 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任教授 (00202870)
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研究分担者 |
ヤェム ヴィボル 東京都立大学, システムデザイン研究科, 助教 (20808258)
雨宮 智浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70396175)
北崎 充晃 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90292739)
笠松 慶子 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (90296385)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 身体感覚刺激 / 空間体験 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,別の空間に存在するという感覚を多感覚の提示により与えて,体験全体の記憶を生成するためのバーチャルリアリティの構造を解明することである.手法として,体験は追体験の形式でユーザが別の空間での活動の記憶を取得する構成を用いる. この場合の視覚刺激として,HMDにおける1人称視点が3人称視点よりもその空間での身体の存在感を強化し,また足底の同期した振動が歩行感覚を向上させることが示された.適用は直進歩行中だが,実用的な最小限の構成要素としてのアバターボディの視覚像と足底刺激による空間運動と臨場感の向上の特性が得られた. 旋回を含む歩行について身体感覚を表現するために,前庭感覚と下肢の固有感覚を生成するディスプレイを構築した.前庭感覚ディスプレイによる旋回歩行運動刺激と下肢固有感覚ディスプレイによる旋回歩行運動刺激を同期させて提示することにより,歩行の自由度を2次元にした体験を表現することが可能となった.旋回の前庭感覚刺激はバーチャル身体の回転角より小さく,各脚に対応する運動量も非対称であることが分かった.更に,実空間中での旋回時の視覚刺激に対して,対応する回転の前庭感覚刺激を与える際の刺激量は角加速度で約50%が適合し,その際,酔いが半分以下に低減できることが示された. 前後方向の加速度を提示する装置として,電動車椅子とそのピッチ運動制御機構を構築した.これにより,ウォッシュアウトを含む加速度提示を用いて,回転型では提示困難な並進成分の加速度を提示できるようにし,これに基づいて身体運動感覚の特性を計測した. 上記の構成により,映像と機械刺激を用いたバーチャル空間中の身体運動を表現する際の適合刺激の範囲が明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により,多感覚の刺激提示を行うことによって,実際の身体が置かれている空間とは異なる状況下のバーチャル身体の条件を調査してきた.直進と旋回の歩行状態について,視覚刺激,四肢と体幹の運動刺激,足底の着床刺激,対地速度の気流,疑似足音の聴覚刺激が有効な範囲を求めることができた.冠状面角度については,立位からの乖離が大きくなると表現力が低下することが分かり,運動中の身体は重力方向が一致することが望ましいことが明らかとなっている.認知シミュレーションについては,能動感を高めるために有効な手段であるが,その導入を受動的に行う方法が課題である. 自律駆動の利用としては,装着のインタフェースの容易性,適合性を考慮すると姿勢情報の利用が望ましい.他方,身体の能動駆動の生体信号に基づけば,原理的には精度が向上するが,キャリブレーションは可用性のデメリットが大きく,工学的には姿勢情報が有利と判断した.音声の利用も検討の余地がある. 熟練運動としては,ドラム打撃を用い,腕の場合のagencyも受動固有感覚,音響,映像で大きく上昇し,運動記憶の向上による誤差低減にも有意な効果が見られており,多感覚の投射刺激の効果が示された.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果に基づいて,本研究の逆投射方式についての知見をまとめる.さらに,計画の各部において,実施すべき項目を再度確認して必要な部分について評価を行うことにより,全体的な知見の整合性を高める.
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