研究課題/領域番号 |
18H04126
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
今村 知明 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80359603)
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研究分担者 |
加藤 源太 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20571277)
赤井 靖宏 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30326326)
石井 均 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30422934)
毛利 貴子 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (30745435)
西岡 祐一 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50812351)
野田 龍也 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70456549)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナショナル・データベース / NDB / データマイニング / シグナル検知 / データベース医学 / KDB |
研究実績の概要 |
(1)医療レセプトと介護レセプト連結における名寄せの検討 本研究では、奈良県のKDBを用いて、医療レセプトと介護レセプトの連結を試みた。KDB 被保険者 マスタに登録されるKDB個人番号等と、保険者番号・被保険者番号等を用いて作成した統合ID(GID)を用いることにより、一定数の追跡精度を得ることができ、GIDに基づく1患者DBを構築した。 (2)医療レセプトと介護レセプト連結による健康寿命の検討 健康寿命の主な代理指標として、医療レセプトからの死亡と介護保険データから要介護2以上になるまでの期間を活用することで健康寿命を積算することを検討した。また、要介護2以上となった医学的要因を探索するために、要介護認定から遡って6か月以内に入院を必要とした主傷病と手術を分析した。新たに要介護2以上と認定された要介護者の大部分が後期高齢者であった。要介護認定の6カ月以内に発生した入院主傷病としては脳血管疾患と骨折の頻度が高く、骨折に対しては手術介入されているケースが多かった。 (3)在宅医療や訪問診療の実態把握と将来予測 KDBを用いて、在宅医療利用患者(以下、在宅患者)の実態を性・年齢階級、市町村別に明らかにするとともに、2045年までの将来需要を推計した。その結果、90歳以上の患者数の増加が顕著であり、2040年まで総数の増加は続き奈良県全体では最大で26,312人となった。しかし、その後は2040年をピークに全体の数は減少することが推計された。また、推計結果を二次医療圏別で比較すると、五つの二次医療圏のうち一つの医療圏では、2040年まで在宅患者数はほとんど横ばいであり、他の医療圏とは異なる傾向が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)基盤技術の開発 2013~19年度奈良県KDBから構築済のDBに、2020年度データを追加して新DBを構築した。NDBと同様のロジックをもとに、統合ID(GID)を用いて1入院1患者化DBおよび1外来1患者化DBの構築を行った。1患者化DBとレセプト形式DBの差分について確認し、以下の2点の課題があることがわかった。 ①診療行為コード等は、まれに1年の中で追加と削除が同時に起こる場合がある。マスタは年度単位で整備しているため、該当する診療行為コード等がマスタに掲載されず、1患者化DBにおいて、一部が1患者DBから欠落する場合がある。②医療機関コードは、実態として変更がない場合でも変更されることがある。1入院1患者化DBでは、全員が月末に退院し翌月初に入院、と扱われる。頻繁に起こるわけではないが、医療機関コードの変更があった場合には、すべて入院の分断があるので分析には注意が必要であることが分かった。 (2)コホート研究の試行 上記の基盤技術を用いて、胃瘻の記述的疫学分析、胃瘻を含む人工栄養増設術の予後分析、胃全摘術と経皮的冠動脈ステント留置術、経皮的冠動脈形成術の予後分析、センチネリアンに対する医療費分析を実施している。介護レセプトと医療レセプトの連結によってはじめて可能となった健康寿命の検討を行っている。医療レセプトからの死亡と介護保険データから要介護2以上になるまでの期間を合わせて、健康寿命を算出した。死亡以外で健康寿命が尽きる要介護2以上となったケースでの医学的要因を探索するために、要介護認定から遡って6か月以内に入院を必要とした主傷病と手術を分析した。入院主傷病は新たに19534件が発生しており、この内訳は脳梗塞1244件(6%)、大腿骨骨折1227件(6%)、心不全761件(6%)、腰椎及び骨盤の骨折691件(4%)、肺炎・病原体不詳597件(3%)の順であった。13634件の手術名については、骨折観血的手術1028件(8%)、人工骨頭挿入術500件(4%)の順に多いことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)糖尿病患者/人工透析患者を対象とするコホートの作成 対象患者をNDBより抽出し、ID0等の個人紐付け手法により名寄せし、入院と外来を結合したコホートを作成している。新規の2020年データを入手できたので、さらに一年分の名寄せとデータベース化を進める予定である。 (2)全傷病名と全医療行為や薬剤の分析 NDBで存在が確認された全傷病名(約23000種類)と全医療行為や薬剤(約19000種類)を対象に「異常な出現」を観測している。傷病名のコーディングや疑い病名の頻出によるノイズの除去、数TBに及ぶデータ同士のクロス集計を伴うため、さらに改善予定である。新型コロナ感染症の流行に伴い、この技術を応用し新規データを分析することで、流行前と流行後に医療内容にどのような変化があったのかを確認してゆく予定である。医科外来レセプトを対象に暦年別病名別(ICD10コード上3桁)に述べ患者数を集計する。 さらに2020 年 の延べ患者数を2019年、過去5年(2014~2018年)の平均と比較する。患者数の単位については各年の延べ加入者数 100 万人日当たりに換算し、加入者数の増減に影響を受けないようにする。これと並行してDPC、医科レセプトを対象に年度別の診療行為区分算定回数を2014~2020年度まで年度ごとに集計する。次に、性年齢別にDPC、医科レセプトを対象に診療行為区分算定回数(注:レセプト枚数ではない)を2014~2020年度まで年度ごとに集計し公表予定である。 (3)奈良県、長野県からのレセプトデータに加えて介護データも入手できたことから、両県のデータも上記に追加し分析を行っている。新規2020年度奈良県KDBをDBにロードし検証と環境整備を行う。KDBデータを介護データのDBへのロードを行い、医療レセプトデータとの結合を行う。新規KDBデータ(令和元年度奈良県KDBデータ(介護))をDBにロードするとともに、DBが正しく構築されているかの検証と環境整備を行う。
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