研究課題/領域番号 |
18H04131
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡辺 豊 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (90333640)
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研究分担者 |
脇田 昌英 国立研究開発法人海洋研究開発機構, むつ研究所, 技術研究員 (30415989)
中野 善之 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 技術研究員 (20566103)
野村 大樹 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (70550739)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 化学海洋学 / 海洋酸性化 |
研究実績の概要 |
2018年度は以下の項目を実施した。 ●研究項目(1)「南大洋の炭酸系物質(pH, Alk, DIC)のパラメタリゼーションの基本原理の評価のための観測とその展開」:東・南極海をターゲットに、JAMSTEC研究観測船・白鳳丸、水産庁・開洋丸、東京海洋大学・海鷹丸、南極観測船・しらせによって、0m~6000m・36層鉛直採水を広範囲にわたる80観測点海水サンプルを取得し、精度2umol/kg以内で分析を実施した。 ●研究項目(2)「南大洋における炭酸系物質のパラメタリゼーションの開発」:南大洋海域(南緯40度以南)の国際的海洋横断面観測計画CLIVAR・GOSHIPの2万採水層の水深0m~6000mまでに及ぶ高精度・高確度なT・S・DO・Pr・炭酸系物質データ群を用い、炭酸系物質のパラメタリゼーションを行い、同領域における3次元の空間分布の把握を行った。さらに、同領域において、1990年から時間的に離散的ではあるが定点観測が実施されている観測ステーションの時系列高精度データ群(T・S・DO・Pr・炭酸系物質)に上記のパラメタリゼーションを適用し、実データと比較することで、パラメタリゼーションによって得られた炭酸系物質の時系列データの妥当性の評価を実施した。上記のデータ群も基盤に、炭酸系物質を水温・塩分・酸素・圧力の関数とするパラメタリゼーションを実施したところ、予備的であるが、南大洋海域において、0mから海底までの範囲で、pH, Alk, DICのパラメタリゼーションが高精度で実施可能なことを確認した。 ●研究項目(3)「南大洋における準リアルタイムな炭酸系物質のマッピング」:海洋自動観測ロボット(中層プロファイリングフロートならびに水中グライダー)のデータ群に対して、品質管理も含め必要なパラメータ(T, S, DO, Pr)についてデータフォーマットを整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に実施予定していた研究項目については概ね進んでおり、順調に結果が出ているため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、2019年度以降は以下の項目を実施し、本研究の目的を達成する予定である。 ●研究項目(2)「南大洋における炭酸系物質のパラメタリゼーションの開発」:2018年度に引き続き、2019年度と2020年度も、研究航海計画予定のJAMSTEC研究観測船・白鳳丸とみらい、東京海洋大学・海鷹丸、南極観測船・しらせを用いて、東・南極海をターゲットに0m~6000m・36層鉛直採水を広範囲にわたる約100観測点(3600サンプル)で実施し、炭酸系物質3600サンプル/年を取得し、高精度・高確度なAlkとDIC同時測定法による測定を実施する。これらを基盤に炭酸系物質(DIC, Alk, pH)のパラメタリゼーションの高精度化を図る。 ●研究項目(3)「南大洋における準リアルタイムな炭酸系物質のマッピング」:研究項目(2)で得られる炭酸系物質(DIC, Alk, pH)のパラメタリゼーションを、南大洋に現在展開している自動海洋観測ロボット(中層プロファイリングフロート、水中グライダー)のデータに適用する。同時に、その周辺で同時期に得られる離散的な炭酸系物質と比較し、自動海洋観測ロボットによって得られる炭酸系物質の精度評価を実施する。これらによって、自動海洋観測ロボットデータ群を用いた南大洋の時空間的に詳細な準リアルタイムの炭酸系物質の動態を把握する観測システムの構築を目指す。 ●研究項目(4)「南大洋におけるpHと人為起源二酸化炭素の時間変動の把握」:上記によって得られた炭酸系物質データ群、ならびに定点観測点の時系列高精度のデータ群より得られた炭酸系物質データ群を統合し、同海域全域にわたり緯度経度10度格子・水深6000mまで100m毎のpHとその原因である人為起源二酸化炭素の時系列変動解析を行う。これにより、同海域における詳細なpHの時系列変動を明らかにすることを目指す。
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