研究実績の概要 |
ヒトが生涯において曝露する化学物質の総量としてエクスポソームが注目されている一方で、その研究戦略が問われてきた。我々は基盤研究S(平成25~29年度)において、食生活、生活環境、ライフスタイルを介して摂取される環境中親電子物質の個別曝露実験を行い、低濃度ではレドックスシグナルを活性化、高濃度では逆に撹乱して毒性を生じること、本現象は高い抗酸化性/求核性を有する活性イオウ分子(Reactive Sulfur Species, RSS)で制御されることを明らかにした。そこで本研究では、環境中親電子物質に特化したエクスポソーム研究を当該物質の低用量・長期・複合曝露実験により細胞および個体レベルで展開し、それらの影響が活性イオウ分子で制御できることを明らかにすることを目的とする。本研究で対象とする環境中親電子物質は、メチル水銀(マグロ等の大型食用魚類)、カドミウム(米)、アクリルアミド(ポテトチップやコーヒー等の加熱食品)、1,4-ナフトキノン(PM2.5および大気中揮発相画分)およびクロトンアルデヒド(タバコの煙)の計5種類。なお、カッコ内は被検物質が含有されている食料、嗜好品あるいは生活環境を示している。 現在までのところ、培養細胞(マウス初代神経細胞、マウス初代心筋細胞、マウス初代肝細胞、ヒト肝ガン細胞由来細胞株およびマウス神経芽細胞腫由来細胞株)をそれぞれ5種類の環境中親電子物質に個別曝露して、用量依存的なレドックスシグナル変動(PTP1B/EGFR、Keap1/Nrf2、HSP90/HSF1およびPTEN/Aktシグナル)および細胞毒性を確認した。
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