研究課題/領域番号 |
18H04141
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
保高 徹生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (60610417)
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研究分担者 |
田上 恵子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 福島再生支援本部, チームリーダー(定常) (10236375)
林 誠二 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島支部, 研究グループ長 (10300849)
駒井 武 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (30357024)
竹田 宜人 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 客員准教授 (30751218)
村上 道夫 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (50509932)
勝見 武 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (60233764)
羽島 有紀 駒澤大学, 経済学部, 講師 (60823995)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / 大規模環境汚染 / Sustainable Remediation / 環境修復フレームワーク / 持続可能性 / 幸福度 / リスク評価 |
研究実績の概要 |
本研究では、東京電力福島第一原子力発電所事故等の陸域の大規模環境汚染に対する合理性・持続可能性を包括した環境修復フレームワークの構築を目的として、(1)土地利用に応じた環境回復シナリオのリスク/コスト分析モデルの構築、(2)発生汚染土壌等の処理プロセスの最適化手法、(3)持続可能性を考慮したサステナブル・レメディエーション(SR)に基づく評価方法の開発・フレームワーク化の研究を推進している。 サブテーマ(1)では、2018年度は森林の放射性セシウムによるリスク評価を主対象とし、自家採取用山野草やキノコへのセシウム移行モデルおよび内部被曝量の評価モデルの開発を目的として、(a)過去の公表データから面的移行係数のDBの基盤データを整理するとともに、(b)コシアブラに注目し、福島県内の林地を対象に生葉や堆積有機物、表層土壌の放射性セシウム濃度測定等を実施し、その関係性を評価した。さらに森林除染の沈着量から空間線量予測モデルおよび内部被曝量推定の基本モデルを構築した。 サブテーマ(2)では、減容化・最終処分のプロセスのリスク/コスト分析モデルを検討した。福島第一原発事故で発生した1300万tの放射性セシウム含有土壌を対象とし、土壌洗浄・熱処理等の減容化技術評価、最終処分に関して適用汚染物質濃度を変数とした評価を実施した。 サブテーマ(3)では、イギリスにおける採鉱隣接地および鉱山・工場跡地の利活用についての現地視察および関係者へのヒアリングおよび、福島県内の旧避難区域の自治体住民にインタビューを実施するための事前調査・ヒアリングを実施した。さらに、2019年度に実施するアンケート調査に向け、震災後の回復過程において、環境修復活動やそれ以外の様々な社会的・文化的活動が幸福度やQuality of lifeに及ぼす影響についての知見を収集するとともに、費用負担、補償等に係る文献調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究予定と比較して、サブテーマ(1)-(3)に関して順調に進んでいるため、概ね順調に進展している、とした。具体的には、サブテーマ(1)、(2)では、次年度以降の研究の発展ができる基盤的なデータの収集や基礎的なモデルの構築、サブテーマ(3)では、住民や行政との関係やインタビュー体制構築、さらにイギリスとの連携体制の構築を実施した。一方で論文の公開の点では物足りない部分もあるが、本年度収集性他データをベースに、次年度以降、加速的に論文化を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ(1)土地利用に応じた環境回復シナリオのリスク/コスト分析モデルの構築では、2018年度に取得・整理したデータから食用野生動植物中の放射性セシウム濃度の経時変化の有無の確認、面積当たりの移行係数を導出して、移行係数DBの構築を実施する。また、避難区域の帰還住民が重要視する里山利用を想定し、既往研究にはない季節を考慮した森林動態、林産物移行、林産物消費を連結し、放射性セシウム沈着量から内部被曝を評価可能なモデルを構築・評価を実施する。さらに、本モデルの重金属汚染への拡張の方策について検討を開始する。また、移行メカニズムの解明として、主な山野草(コシアブラやタラノメ、ワラビ等)の新芽と土壌中の吸着形態別放射性セシウム濃度を測定するとともに、根系分布調査を行い、種間での放射性セシウム濃度差に対する生息場の放射性セシウム存在形態や根系分布の影響を明らかにする。 サブテーマ(2) 発生汚染土壌等の処理プロセスの最適化手法では、2018年度に開発した減容化・最終処分のプロセスのリスク/コスト分析モデルをベースとして、実際の1300万tの除去土壌等の処理の最適化計算を実施する。 サブテーマ(3)大規模環境汚染に対するSRのフレームワークの構築と適用では、旧避難区域の住民にインタビューを実施し、未除染森林、除染と避難期間の課題等について、環境・社会・経済の視点からインデックス化を進めるとともに、質的な評価を実施する。さらに、震災後の回復過程において、環境修復活動やそれ以外の様々な社会的・文化的活動が幸福度やQuality of lifeに及ぼす影響を明らかにするため、アンケートを実施し、解析する。また、重金属汚染問題に対してもインタビュー調査を実施し、SRの指標化を進める。
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