研究課題
地球環境の動態を理解する上で最も重要なパラメータである「温度」情報を定量的に得るために、炭酸塩の安定同位体比や微量元素比など多くの手法が提案されてきた。本課題では最先端のレーザー分光技術によるCO2のレア・アイソトープの高感度検出法を駆使することで、これまでとは一線を画した炭酸塩の生成温度決定法を提案する。具体的には、クランプト・アイソトープ(凝集・同位体:重い同位体が2つ以上結合している分子:CO2の場合13C、17O、18Oが2つ以上結合)の中で温度依存性が高い13C18O16Oと温度依存性が極めて低い13C17O16Oの吸収スペクトルを高分解能で同時検出して、炭酸塩に含まれる両者の同位体比の差を比較するという新しいアプローチを提案する。本課題を起爆剤として、質量分析による従来の計測技術および温度指標の考え方からのブレークスルーを目指す。そのために必要な量子カスケードレーザーについて、当初の予想の反して最適波長域が複数存在することが明らかとなり、HITRANデータベース(赤外域における分子の吸収データベース)をもとに、さらに精査を実施することになったが、本研究に最適なレーザー素子を無事に導入することができた。これを踏まえて、精密ガス導入ラインを接続した分光システムで、13C18O16Oと13C17O16Oの吸収スペクトルの同時検出に加えて、水蒸気・アンモニアの安定同位体検出へと適用範囲を広げることができた。
3: やや遅れている
中赤外レーザーの最適波長域が複数存在することが判明し、採用するレーザー素子と光学系システムの選定調査を追加で実施したため、予定よりも実験計画に遅れが生じた。
中赤外分光装置の基礎性能に関わるデータを多面的に取得したのち、最適計測条件を導出、実試料の計測を進める。同時に、本システムを二酸化炭素だけでなく、水・アンモニアなどの他の分子の安定同位体への応用を進める。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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