研究課題
2021年2月-3月、5月および2021年12月-2022年1月に行われた航海に参加し、亜寒帯観測定点K2および亜熱帯観測定点KEOの複数層で長期間係留していた後方散乱計を回収した。またこれらの航海で後方散乱データを粒子状有機炭素(POC)に換算するための観測・POC採集を行った。これらの結果から、後方散乱データをPOC値に換算してKEOとK2におけるPOC値の時系列変化を算出した。KEOでは秋に亜表層極大が見られ、春季にクロロフィルの増加に同調したPOC増加が観測された。考察の結果、後方散乱計で見積もられるPOCおよびPOCフラックスは小粒子によるものであり、従来のセジメントトラップにより観測されるPOCフラックスは大粒子のものであり、両者は関係はあるが異なるものである可能性が示唆された。一方では、K2およびKEO付近に投入されたBGC-ARGOで得られた後方散乱データから、POCの鉛直分布の季節変動を算出し、定常状態におけるPOCフラックス年平均値の鉛直変化について考察を試みた。その結果、KEOのPOCフラックスの鉛直変化はK2のものより大きい可能性が示唆された。ただしKEOの場合はBGC-ARGOが黒潮続流によって大きく移動しているため、推定結果の地域代表性を検討すべきである、と考察された。さらに数値シミュレーションにより推定されたKEO付近の流向流速の3次元的分布を用いて、バックトラジェクトリー解析(後方流跡線解析)を行い、KEOの深海セジメントトラップで捕集された沈降粒子の起源(形成場所)を推定した。その結果、粒子の起源は最大500 km x 500 kmの範囲である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、後方散乱計を購入し、購入した後方散乱計を観測定点K2, KEOに設置した結果、長期にわたる時系列観測に成功した。得られた後方散乱データをPOCに換算することでPOCの季節変化、鉛直変化も推定できている。またBGC-ARGOの後方散乱データからのPOCの鉛直分布の季節変化も観測されている。さらに、各年の成果を紹介するウエブサイトも構築しており、ほぼ計画通りである。
最終年度は、新たに得られたデータの解析を行いこれまでのデータと統合して解析し、セジメントトラップデータ・衛星データとの比較、および数値シミュレーションをあわせて実施することで、光学的に観測したPOCデータから亜寒帯域、亜熱帯域のPOCの鉛直変化(マーチンカーブ)についてまとめる。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 備考 (1件)
Remote Sensing
巻: 14 ページ: -
10.3390/rs14051186
Journal of Geophysical Research: Oceans
巻: 126 ページ: -
10.1029/2020JC016864
Geophysical Research Letters
巻: 48 ページ: -
10.1029/2021GL092895
https://www.jamstec.go.jp/egcr/j/rr/martincurve/index.html