研究課題/領域番号 |
18H04146
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
黒沢 高秀 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (80292449)
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研究分担者 |
吉田 龍平 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (70701308)
柴崎 直明 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70400588)
藪崎 志穂 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 研究員 (60447232)
平吹 喜彦 東北学院大学, 教養学部, 教授 (50143045)
永松 大 鳥取大学, 農学部, 教授 (20353790)
兼子 伸吾 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (30635983)
川崎 興太 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (20598578)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 津波被災地 / 復旧事業 / 生態系 / 海岸林 / 絶滅危惧種 / 砂浜 |
研究実績の概要 |
宮城県仙台湾沿岸から福島県相双地域の平野部の復旧事業が行われている区域で気象,地下水動態・水質,植生,植物相,遺伝的多様性,都市計画に関して,観測,調査,解析を開始した。気象に関して日本全域をカバーする過去10年間の3次元大気データを収集・解析し,少なくとも5kmスケールでは震災による土地被覆変化に由来する気温や風速の変化は検出できないことを明らかにした。地下水動態・水質に関して,仙台市宮城野区新浜地区において,貞山運河付近の表流水を2箇所で採水し分析するとともに,既存井戸6箇所の地下水について定期的に現場水質測定と室内水質分析を行った。また,既存井戸2箇所に絶対圧型自記水位計を設置し,30分間隔で地下水位と地下水温の連続観測を開始した。併せて,滞留時間分析用の試料も4地点で採取した。植生に関して,南蒲生の砂浜海岸エコトーンで植生調査とドローンによる画像取得を実行し,過去のデータと比較して,植生変遷と微細地形の不均一性の実態および自律的再生にかかわるそれらの意義を検討した。また宮城県仙台湾沿岸から福島県相双地域の復旧事業が行われている砂浜海岸地域の状況を改めて確認した。防潮堤,海岸林の復旧完了直後で今後の変化を追跡しやすい相馬市松川浦に3本の調査測線を設定し,植生調査を実施して今後の追跡を開始した。福島県相馬市のヒヌマイトトンボ生息地の震災前から復旧事業後までの植生や土地利用の変化を大学紀要で報告した。植物相に関して海岸防災林内に設けた保護区3箇所の調査を進めるとともに,福島県内の津波被災地の絶滅危惧種の概況を大学紀要で報告した。都市計画に関して,防災緑地や海岸防災林の整備計画・状況などについて整理するとともに,福島県いわき市豊間地区の住民を対象として防災緑地に関するアンケート調査やヒアリング調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り,宮城県仙台湾沿岸から福島県相双地域の平野部の復旧事業が行われている区域で,気象,地下水動態・水質,植生,植物相,遺伝的多様性,都市計画に関して,観測,調査,解析を開始することができた。初年度にもかかわらず,論文4報,学会発表10件の成果があがっている。津波被災地で活動する他の2件の研究プロジェクトと共同でフォーラム「海辺復興と多重防御 生態系サービス・暮らし・地域づくりを考える」を開催し,市民,自治体職員,研究者など50名が参加するなど,関連する団体との連携を進めることができ,普及・啓発も着手できた。地元紙福島民友には「全国植樹祭会場に隣接する希少生物の楽園 環境に配慮した復興事業」という記事を寄稿した(2018年5月2日掲載)。また,福島県版レッドリスト(ふくしまレッドリスト(2018年版))に本研究で得られた絶滅危惧種の状況が反映されるなど,自治体の環境行政への具体的な貢献もあった。 このように,本研究の2つの目的「(1) 生態系全般にかかわる資料およびデータを収集し,記録として残し,土地利用・都市計画も含めた多様な視点から,震災前や震災直後からの変化を分析すること」,「(2) 得られた知見を元に,災害科学・水工学的観点も加えて,これらの変化がもたらす悪影響を軽減する方策,あるいは影響を活かしたより良い環境の創生を検討し,積極的に社会に発信していくこと」に関して,一年目にもかかわらず,すでに一定の成果が上がっているものと考えられる。このような理由で本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,宮城県仙台湾沿岸から福島県相双地域の平野部の復旧事業が行われている区域で,気象,地下水動態・水質,植生,植物相,遺伝的多様性,都市計画に関して,計画通り観測,調査,解析を継続していく予定である。研究2年目になるので,初年度のデータと比較するなどの経年変化に関する解析も新たに進める。得られた成果は学会等で発表し,論文等にまとめるとともに,積極的に普及・啓発をはかる。好評であった,津波被災地で活動する他の団体との共同のフォーラムなども,継続して行いたい。また,得られた成果をもとにした,国や自治体などの行政への貢献にも,引き続き力を入れていきたいと考えている。 研究計画の変更は特にない。 平成30年度は,初年度ということもあり,研究を遂行する上で必要な許可申請や関係する国や自治体への協力要請に時間がかかってしまったが,今年度は経験を活かして,より短期間にすませ,より早い時期に調査にいけるよう,体制を整えたいと考えている。
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