研究課題
本研究の目的、炉内から放出された放射性微粒子やエアロゾルの挙動を推測するため、炉内の構造物質や存在する放射性物質、海水を含む様々な放射性微粒子やエアロゾルが生成し成長する過程を解明することである。まず、複数の核種を含む放射性エアロゾルの成長・輸送機構の解明するため、人工放射性エアロゾルの発生実験では中性子照射したウラン試料から放出された核分裂核種(FP)のうち、I-131,0Te-132,Ba-140(La-140)等を含んだ放射性エアロゾルが生成し、ポリカーボネート製フィルターまで輸送して捕集し、溶液エアロゾルへの吸着収率を調べた。この結果から、人工の溶液エアロゾルへの元素依(放射性同位元素)存性性があることが示唆された。炉内から放出さたた放射性プリュームの生成メカニズムを推測できると考えられる。さらに、福島第一原子力発電所周辺の土壌中に存在する放射性微粒子の探索と性状分析を行い、その元素組成等の化学的性質の調査を行ってきた。環境中に放出された放射性微粒子の性状を調べるため、まずイメージングプレート等を用いて土壌中の微粒子探索を行った。また、核分裂生成物を含む人工放射性エアロゾルの成長・輸送の模擬実験を行った。まず、環境中に放出された放射性微粒子の性状を調べるため、イメージングプレートを用いて土壌中の微粒子探索を行い、採取されたType Bと推測される放射性微粒子に対し、SEM/EDXを用いた外観観察と粒子表面の元素分析を行った。粒子本体を構成する主要な元素は酸素、ケイ素、ナトリウム等であり、少量のカルシウム、アルミニウム、マグネシウムなどを含むことが明らかとなった。また、珪藻土の存在も明らかになった。このことから成分を模擬した放射性微粒子を形成する高温模擬実験が行われた。
3: やや遅れている
福島の事故によって溶融した炉心の付近で生成する放射性エアロゾルの性状およびその生成メカニズムを知ることは、放出された後の環境中での放射性物質の移行を推測する上で重要な情報となる。そのため、我々の研究室では核分裂生成物を含んだ放射性エアロゾルを模擬的に生成する装置を開発し、生成させた放射性エアロゾルの性質を調べ、その生成メカニズムの解明を目指した。これまでの研究では核分裂生成物を生成するために自発核分裂性核種であるCf-252や中性子照射ウランを用い、対象とするエアロゾルとして溶液状エアロゾルを用いた実験を行い、核分裂生成物が溶液状エアロゾル粒子に付着して放射性エアロゾル粒子が生成する過程について考察を行ってきた。特に昨年度は、放射性エアロゾルの簡便な測定法を開発及び様々な溶液エアロゾル化学的性状を解明するため研究用原子炉(KUR)で照射したウラン試料を加熱することで放出される核分裂生成物(FP)を用いた放射性エアロゾル付着実験が行われた。環境中に放出された放射性微粒子の性状を調べるため、イメージングプレートを用いて土壌中の微粒子探索を行い、採取されたType Bと推測される放射性微粒子に対し、SEM/EDXを用いた外観観察と粒子表面の元素分析を行った。粒子本体を構成する主要な元素は酸素、ケイ素、ナトリウムであり、少量のカルシウム、アルミニウム、マグネシウムなどを含むことが明らかにすることができた。環境中のType Bの生成メカニズムを調べるため電気炉やレーザーアブレーションによる放射性模擬微粒子を生成する高温実験が行われた。しかし、コロナ禍の状況のために資料収集や発表の機会が制限され、成果公表が十分ではなかった。
溶融した燃料デブリから放出されたFP(Fission Product, 核分裂生成物)が放射性エアロゾルとして成長し、炉内材料とともに放射性微粒子を形成・輸送される過程の機構を実験的に解明する模擬実験を継続して行う。このうち、ウランなどの燃料デブリからFPが放出され、周囲の空気中に存在すると予想される溶液状エアロゾルと反応し、放射性エアロゾルとして成長する過程を解明するために、引き続き、これらの状況を模擬するためのウランからのFP飛沫装置の改良を重ねて人工放射性エアロゾルの高度な生成実験を行う。福島原子炉事故により放出された放射性微粒子(いわゆるセシウムボール)のEDX分析により、微粒子の主要構成元素の概要が明らかとなった。この結果をもとにして放射性微粒子の起源となった材料を推定し、事故時の炉内環境を模擬した模擬微粒子の生成実験を行う。レーザーアブレーションや高周波炉等を用いて材料を加熱する高温実験を計画している。その予備段階として、電気炉等を用いた1200℃程度までの中高温実験を行う。まず、コンクリートやそれを模擬した試料をその他の添加物とともに加熱し、コンクリートの溶融が始まるとされる1100~1200℃におけるその挙動を観察する。また、加熱する試料を変えながら加熱実験を行い、得られた生成物から微粒子の材料としての妥当性を検証する。中高温実験の範囲内において、加熱した試料が飛散・冷却されるような装置を設計し、模擬微粒子生成装置を開発する。この装置において、加熱する温度などを変更しながら模擬微粒子を生成し、実際の放射性微粒子との比較から炉内環境についての考察を行う。また、その結果をもとにレーザーアブレーションや高周波炉等を用いた高温実験の検討を行う。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件)
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