九州北部豪雨による流木被害の要因と影響：森林環境政策の合意形成に向けて

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 18H04152
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 佐藤 宣子 九州大学, 農学研究院, 教授 (80253516)
• 研究分担者: 溝上 展也 九州大学, 農学研究院, 教授 (00274522) ; 作田 耕太郎 九州大学, 農学研究院, 助教 (10274523) ; 渡辺 敦史 九州大学, 農学研究院, 教授 (10360471) ; 水野 秀明 九州大学, 農学研究院, 准教授 (80356104) ; 藤原 敬大 九州大学, 農学研究院, 准教授 (20637839) ; 大槻 恭一 九州大学, 農学研究院, 教授 (80183763) ; 笠原 玉青 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10622037) ; 知足 美加子 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (40284583) ; 三谷 泰浩 九州大学, 工学研究院, 教授 (20301343)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 土砂・流木被害 / スギ / 天然更新 / コミュニティ / ゾーニング / 渓流 / 森林環境政策 / 文化

研究実績の概要

平成29（2017）年7月九州北部豪雨被災地で流木の流下が多かった流域では、①流木の停止条件となる狭窄部で流木長の1.3倍以下の川幅が域内になく、②土石流が堆積し始める勾配より急な渓流区間が流域内の93.5%を占めたこと、③流域内のほとんどの斜面が勾配 30°以上であったこと、により流木が停止しにくかったと推定できた。また、表層崩壊確率に及ぼす森林タイプおよび林齢の影響を検証するために統計的因果推論に基づく関係解析を行った。その結果、19年生以下の林分は20年生以上の針葉樹人工林と広葉樹林と比較すると斜面崩壊が発生する確率がより高く、針葉樹人工林と広葉樹林では斜面崩壊の発生確率に差がないことがわかった。一方、被害地域に多い挿し木苗の根系発達を評価する手法の確立を目指し、植栽した苗木の引き抜き試験を行った。その結果、根系の抵抗力は地上部の苗高および地際直径と高い相関を示すことが示唆された。
被害の影響および復興過程の調査では、土砂・流木災害発生時から5何件経年的に植生回復と河床の安定性の調査を実施した。土砂崩壊地で草本植物の被覆は確認されたが木本植物は少ないこと、河床礫の移動率は既往研究結果と比較して高く、河床はまだ不安定であることが示唆された。
また、被災集落では豪雨被害を契機に世帯数が減少し、農林業の復興が課題となっていた。そうした中で、柿の紅葉景観を活かしたコミュニティ復興を図る集落での参与観察、被災流木やスギ巨木の落枝による彫刻作品の制作と修験道森林文化の伝承について調査を行い、景観や文化の再生と形成が地域のレジリエンス向上につながることを指摘した。
さらに、森林のゾーニングを考え、森林所有者や地域住民の合意形成を図るために、傾斜度、平面曲率、集水面積の3つの地形指標から災害リスクを考慮した林業不適地の抽出が簡便にできることを示した。

現在までの達成度 (段落)

令和3年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和3年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] The Process and Challenges of Resident-Led Reconstruction in a Mountain Community Damaged by the Northern Kyushu Torrential Rain Disaster: A Case Study of the Hiraenoki Community, Asakura City, Fukuoka Prefecture, Japan (2023)
  • 著者名/発表者名: Yoshio Harada,Ai Ichinose,Tatsuya Owake,Kazuo Asahiro,Noriko Sato,Takahiro Fujiwara
  • 雑誌名: Forests 巻: 14(4), 664 ページ: 1-19
  • DOI: 10.3390/f14040664
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 自然災害の激甚化による山地災害の特徴と地域社会への影響 (2023)
  • 著者名/発表者名: 佐藤宣子
  • 雑誌名: 年報「森林環境」 巻: 森林環境2023 ページ: 42-50
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 豪雨被災中山間集落における修景デザインによる復興支援 平成29年7月九州北部豪雨で被災した福岡県朝倉市志波平榎集落における櫟山見晴台づくりを事例に（作品） (2022)
  • 著者名/発表者名: 朝廣和夫,鷲見直紀,橋爪良菜,佐藤宣子,藤原敬大,作田耕太郎,三谷泰浩
  • 雑誌名: 芸術工学研究 巻: Vol.37 ページ: 17-30
  • DOI: 10.15017/5208226
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 主伐・再造林への森林政策の転換と矛盾の広がり (2022)
  • 著者名/発表者名: 佐藤宣子
  • 雑誌名: 農村と都市をむすぶ 巻: 847 ページ: 20-28
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] Effects of dams and reservoirs on organic matter decomposition in the hyporheic zone in forest mountain streams (2022)
  • 著者名/発表者名: Kasahara T., Li Y. and Tanaka A.
  • 雑誌名: Hydrobiologia 巻: 849 ページ: 2949-2965
  • DOI: 10.1007/s10750-022-04905-w
  • 査読あり
• [雑誌論文] Characterization of dominant factors on evapotranspiration with seasonal soil water changes in two adjacent forests in the semiarid Loess Plateau (2022)
  • 著者名/発表者名: 1.Chen, Q.W, Liu, M.J., Lyu, J.L., Li, G.Q., Otsuki, K., Yamanaka, N., Du, S.
  • 雑誌名: Journal of Hydrology 巻: 613-B ページ: 128427
  • DOI: 10.1016/j.jhydrol.2022.128427
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] A global synthesis on the effects of thinning on hydrological processes: Implications for forest management (2022)
  • 著者名/発表者名: 2.del Campo, A.D., Otsuki, K., Serengil, Y., Blanco, J.A., Yousefpour, R., Wei, X.H.
  • 雑誌名: Forest Ecology and Management 巻: 519 ページ: 120324
  • DOI: 10.1016/j.foreco.2022.120324
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Differences in the short-term responses of soil nitrogen and microbial dynamics to soil moisture variation in two adjacent dryland forests (2022)
  • 著者名/発表者名: 3.Tatsumi, C., Taniguchi, T., Du, S., Chen, Q.W., Yamanaka, N., Otsuki, K., Tateno, R.
  • 雑誌名: European Journal of Soil Biology 巻: 110 ページ: 103394
  • DOI: 10.1016/j.ejsobi.2022.103394
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Application of the reformulated Gash analytical model for rainfall interception loss to unmanaged high-density coniferous plantations laden with dead branches (2022)
  • 著者名/発表者名: 4.Jeong，S., Kume, T., Shinohara, Y., Moein Farahnak, Otsuki, K.
  • 雑誌名: Forests 巻: 13-5 ページ: 657
  • DOI: 10.3390/f13050657
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Age-related changes in culm respiration of Phyllostachys pubescens culms with their anatomical and morphological traits (2022)
  • 著者名/発表者名: 5.Uchida, E.M., Katayama, A., Yasuda, Y., Enoki, T., Otsuki, K., Koga, S., Utsumi, Y.
  • 雑誌名: Frontiers in Forests and Global Change 巻: 5 ページ: 868732
  • DOI: 10.3389/ffgc.2022.868732
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 木材生産性と災害リスクを統合した林業不適地推定モデルの構築 (2023)
  • 著者名/発表者名: 寺田愛理
  • 学会等名: 森林GISフォーラム 学生コンテスト2023
• [学会発表] 林地開発による太陽光発電施設の設置と豪雨災害 ─熊本県を事例に─ (2023)
  • 著者名/発表者名: 岡本尚之・藤原敬大・佐藤宣子
  • 学会等名: 第134回日本森林学会大会
• [学会発表] 砂災害後の渓流における河床安定性の評価 (2023)
  • 著者名/発表者名: 笠原玉青
  • 学会等名: 第134回日本森林学会大会
• [学会発表] 林業適地把握に向けた木材生産性および斜面崩壊災発生確率の関係解析 (2022)
  • 著者名/発表者名: 寺田愛理・太田徹志・溝上展也
  • 学会等名: 第78回九州森林学会大会
• [学会発表] 英彦山修験道における自然信仰と森林文化再考ー鬼杉落枝と千本杉による不動明王像制作ー (2022)
  • 著者名/発表者名: 知足 美加子
  • 学会等名: 日本山岳修験学会,「第42回日本山岳修験学会 飯田学術大会」
• [学会発表] 母の膳（災害被災木） (2022)
  • 著者名/発表者名: 知足 美加子
  • 学会等名: 第96回国展（国立新美術館）
• [学会発表] 寒水大師（災害被災木） (2022)
  • 著者名/発表者名: 知足美加子
  • 学会等名: 福岡県展会員展
• [学会発表] How young generations are oriented towards small-scale forestry in Japan? Results of a questionnaire to registered members of the mailing list of the NPO Association for the Promotion of Self-Logging Forestry (2022)
  • 著者名/発表者名: Noriko Sato,Riu Sone,Takahiro Fuiwara
  • 学会等名: IUFRO 3.08.00 Small-scale Forestry
  • 国際学会
• [学会発表] Management issue of the small scale forestry management entities after introduction the high-performance forestry machinery in the wake of a disaster (2022)
  • 著者名/発表者名: Tatsuya OWAKE,Noriko SATO
  • 学会等名: IUFRO 3.08.00 Small-scale Forestry
  • 国際学会
• [学会発表] 造文化財建造物の修理・修復用材調達に関する考察―重要文化財の江藤家住宅を事例にー (2022)
  • 著者名/発表者名: 小川真穂・宮野岳明・藤原敬大・佐藤宣子
  • 学会等名: 第78回九州森林学会大会
• [学会発表] 木質バイオマス発電所が森林施業に及ぼす影響：豪雪地帯と四国・九州地方の比較 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大西海・箕口秀夫・藤原敬大・佐藤宣子
  • 学会等名: 第78回九州森林学会大会
• [学会発表] 朝倉市奈良ヶ谷川流域で流木流出率が高かった原因の分析 (2022)
  • 著者名/発表者名: 森晴香・江藤稚佳子・水野秀明
  • 学会等名: 令和４年度砂防学会研究発表会
• [学会発表] Sediment related Disasters Triggered by Severe Rainfall in Fukuoka Prefecture in 2019 (2022)
  • 著者名/発表者名: Hideaki MIZUNO
  • 学会等名: A joint international workshop titled "Towards the Thought Process of Slope Disaster Prevention in the AI Era" organized by AsRTC1 and IMI
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] スギ不定根形成対する光量の影響 (2022)
  • 著者名/発表者名: 村田淳之介・栗田学・田村美帆・渡辺敦史
  • 学会等名: 森林遺伝育種学会
• [学会発表] 鬼の目山スギ群の遺伝解析 (2022)
  • 著者名/発表者名: 弓削直樹・武津英太郎・田村美帆・渡辺敦史
  • 学会等名: 森林遺伝育種学会
• [図書] 森林水文学入門 (2022)
  • 著者名/発表者名: 大槻恭一・久米朋宣・笠原玉青（編著）
  • 総ページ数: 256
  • 出版者: 朝倉書店
  • ISBN: 978-4-254-47060-4