研究課題/領域番号 |
18H04158
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西澤 松彦 東北大学, 工学研究科, 教授 (20273592)
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研究分担者 |
田中 徹 東北大学, 医工学研究科, 教授 (40417382)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ハイドロゲル電極 |
研究実績の概要 |
ソフトウェット電極(ハイドロゲル電極および酵素電極ファブリック)の機能拡張を推し進め,両者を組み合わせて,電気的な計測・刺激(診断・治療)を低侵襲に行う新規医療デバイスのプラットフォームを創出のを目的として研究を推進した。特に、ハイドロゲルなど有機材料の「生体組織と同様な柔軟性」や「分子透過性」,膨潤によるサイズ・形状の変化を活かした「体内患部への密着固定」などの基盤的な特徴を確立し,さらに,バイオ発電による「手術創治癒の促進機能」と「投薬制御機能」を搭載して,「エネルギー自立型」デバイスの実現可能性を示すことの具体を示すために実験を行うことができた。 今年度は、頭蓋内電極に関して、従来のカーボン繊維製の電極配線に代えて伝導性ゲルを配線することによって、脳表患部の可視性に優れた全透明のハイドロゲル電極の作製を行い、動物実験による機能実証までを行うことができた。伝導性ゲルを充填したシリコーン製マイクロチャネルを、表面微細構造によるインターロッキング接合によってゲル内に安定包埋してイオン性配線として活用した。一方、電荷固定したポーラスマイクロニードルを用いた経皮電気浸透流の発生メカニズムの実証に成功し、薬剤の高効率投与や、生体液の高効率採取に応用可能であることを示した。これを、昨年度開発した直列型高電圧バイオ電池と組み合わせることによって、オール有機のバイオ発電ポンプパッチの実現に到達できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伝導ゲルによる電極・配線の作製を行得たことによって、ハイドロゲル製電極の利点として、柔軟性・密着性・分子透過性・MRI親和性に加えて患部可視性を備えた全透明ゲル電極を実現できた。そのために開発したシリコーンとゲルのインターロッキング接合は、ハイドロゲルをデバイス材料に活用する今後の研究を大きく展開させる意義を有する汎用性のある成果でもある。オール有機のバイオ発電ポンプパッチは、これまで開発を進めてきたバイオ発電パッチの応用対象を拡大する意義を有し、例えばワクチン投与などへの応用の道を拓いた。このように、計画実施にとどまらず、今後につながる成果も得られており、順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ハイドロゲル基材の膨潤圧力によって密着固定するカフ型のゲル電極の開発を進める。迷走神経(直径2mm程度)に巻付いて密着し、電気パルス刺激によっててんかん発作の抑制やうつ症状の緩和などの治療効果を発揮する長期埋込型デバイスである。現行品は、プラスチック機材に金属電極が配線されているが、物質透過性を有するハイドロゲルを基材とすることで、密着しても組織への物質循環を阻害しない長期安定性が期待できる。昨年度までの成果として実現済のハイドロゲル製部外内電極(シート状)で用いたポリビニルアルコールを基材とし、カーボン布もしくはカーボンペーパーを電極材料として包埋することを検討する。技術開発のポイントは、生体組織に巻付くためのゲル形状の設 計であり、サイズの異なるゲルシート2枚の貼り合わせによって生じる内部応力を利用する。巻付き圧力を計測するための細棒型の圧力センサを開発して、貼り合わせで生じる内部応力の値と巻付き圧力との関連を整理して、対応組織のサイズ(迷走神経の太さ)に応じたオンデマンドデザインを可能とする。東北大学病院の脳神経外科のグループに協力を依頼して、実験用ブタによる巻付き固定実験、および刺激実験を行う。また、オール有機のバイオ発電ポンプパッチのワクチン投与への応用に着手し、年度内に動物実験による抗体価評価を行う予定である。
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