研究課題/領域番号 |
18H04162
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 洋史 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80206523)
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研究分担者 |
本間 雅 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60401072)
苅谷 嘉顕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20633168)
池淵 祐樹 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20645725)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | キナーゼ阻害剤 / in silico解析 / システム薬理学 / がん / 治療最適化 |
研究実績の概要 |
キナーゼ阻害薬はがん薬物療法において極めて重要な薬剤であるが、副作用の発症機構に未だ不明な点が多く、臨床用量の適切な設定手法も確立されていない。本研究では効果発現・副作用発症の分子機構理解に立脚したPK-PD/TD解析を行うことで、これら薬物の効果を維持しつつ副作用を最小限に抑えるための合理的な投与量設定法を確立することを目標とする。in silico、in vitro、in vivoの融合的方法論により、副作用発症機構の解析と薬物血漿中濃度との定量的関係の解析、抗がん効果と薬物血漿中濃度との定量的関係の分子基盤に基づく解析を行い、最終的にこれらを統合による薬物治療濃度基準を定めることを目標とする。2018年度は、in silicoでの副作用・主作用に関して、分子基盤からの予測する方法論の構築を中心に解析を進めた。具体的には、分子基盤に関して、詳細な機構論を仮定せずにモデル化する機械学習的アプローチ、および、機構論に基づくモデルを、定量的に解析する手法の構築を進めており、プロトタイプとなる手法が確立されつつある。また、in vivoでの検証解析の準備として、まず、副作用評価に関する実験系の準備を進めている。次年度以降は、in silico解析に関して、構築されたプロトタイプの予測系を、in silico解析での工夫による改善を目指すほか、in vitro細胞系を用いて、in silico解析結果の検証を進める。良好な予測性が認められる薬物と、予測から大きく外れる薬物を分類することで、現状の予測系において、適切に予測されていこない要因を分析し、更なる予測モデルの精緻化を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、特にin silico解析における予測系の構築に注力し、研究を遂行した。その過程で当初の予定していた、機構論に基づく予測系確立に加えて、詳細な機構論を仮定せずにモデル化する機械学習的アプローチでのモデル構築にも一定の目処がつきつつあり、薬効(主作用・副作用)の定量予測の基盤構築という研究目的に対して、適切に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、in silico解析に関して、構築されたプロトタイプの予測系を、in silico解析での工夫による改善を目指すほか、in vitro細胞系を用いて、in silico解析結果の検証を進める。一例としては、主作用の予測系において、ある種のがん細胞に対する殺細胞効果に対して、極めて大きな寄与が想定されるキナーゼを抽出し、in vitroにて、そのキナーゼの発現抑制の効果を検証するほか、単独のキナーゼの影響のみならず、複数のキナーゼの影響を予測した場合の、トータルとしての薬理効果を適切に予測できているか、検証を進める。この過程で、良好な予測性が認められる薬物と、予測から大きく外れる薬物を分類することで、現状の予測系において、適切に予測されていこない要因を分析し、更なる予測モデルの精緻化を進める予定である。また、上記の解析は、主として主作用に着目した検証となる。これらの解析は、データベース上に、遺伝子発現・変異・薬理効果などの膨大なデータベースがある抗がん剤による抗がん効果(主作用)の予測解析において実施していく計画である。副作用に関しては、主に、薬理効果(各種臓器機能の障害度合い)と薬物の関係に関して、統一的なプラットフォームで取得されたデータが必ずしも多くないため、各種臓器由来の初代培養細胞に対する薬物の効果を in vitroにて評価しつつ、予測系の精度評価や精緻化を進める予定である。
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