研究課題/領域番号 |
18H04168
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
吉川 元起 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (70401172)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 嗅覚センサ / 呼気診断 / 膜型表面応力センサ(MSS) / 機械学習 / マーカー特徴量 |
研究実績の概要 |
本研究は、NIMSで独自に開発された嗅覚センサ「MSS(膜型表面応力センサ、Membrane-type Surface stress Sensor)」を用いて、呼気によるがん診断の可能性の実証を目指すものである。多成分混合ガスである呼気は、疾患によって数十種類のガス濃度比が微妙に変化することが確認されている。そのため、疾患の状態を反映する「マーカー分子」の特定が難しいだけでなく、それらをピンポイントに測定するだけでは情報不足となることが報告されている。そこで本研究では、物理化学的特性の異なる複数の感応膜を塗布したMSSアレイを用いて呼気全体をパターン化し、疾患に起因する複雑なガス濃度比の変化全体を捉えることを目指す。このMSSセンサシグナルのうち、がん関連の医療データと明確な相関を示す特徴を「マーカー特徴量」と定義し、その網羅的な探索を行う。 2019年度は、共同研究先の医療機関にて採取・測定された呼気データについて、多角的な解析を進めた。これらの医療機関で大量の呼気データを採取・測定したことにより、統計的な議論が可能なレベルのデータセットが得られた。これまでに、特定のがんにサンプルを絞り、さらに同一患者の複数条件を比較することで、可能な限りバックグラウンドを揃えた呼気サンプルのデータセットを構築し、これに対して集中的な解析を行った。特に、今回測定に用いた複数種のセンサのうち、どのセンサが予測モデルの構築に有効かを調べ、いくつかの「マーカー特徴量」の候補の絞り込みが進みつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目標であった「マーカー特徴量」の候補が絞り込まれつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より多くのがん種の呼気サンプル測定データに対して、同時に測定されたガスクロマトグラフ質量分析計のデータと照合することによって、可能な限り「マーカー分子」と「マーカー特徴量」との紐付けを行い、相関だけで無く、一定の因果関係の解明を目指す。 また、これまでに有効性が確認されつつあるセンサに着目し、それらと類似かつ化学的選択性の異なるセンサの作製を進め、より高精度な予測モデルが構築できるように最適化を進める。特に、呼気サンプルは必然的に高湿度となるため、これらに対応したセンサのレパートリーの拡充を進める。
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