研究課題/領域番号 |
18H04169
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梅田 泉 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (40160791)
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研究分担者 |
藤井 博史 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 分野長 (80218982)
秋元 哲夫 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 分野長 (10261851)
小嶋 基寛 国立研究開発法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, ユニット長 (30338470)
光永 修一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医長 (20466197)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | radio-theranostics / 核医学治療 / 核医学イメージング / がん治療 / リポソーム / 放射性核種 |
研究実績の概要 |
本年度は治療用核種であるCu-64/67やY-90について、さまざまな配位子を組み合わせてのリポソーム封入法の検討、RI封入リポソームの安定性、並びに動物に投与後の体内挙動を調べ、診断用核種である In-111やTc-99mとの相違を検討した。 昨年度開発したHPLCと安定同位体を用いた錯体形成評価システムを活用して、CuやYと様々な配位子との錯体形成を評価し、さらにリポソームへの封入条件を検討した。安定同位体Cu2+はDOTA、TETA、NOTA、CB-TE2AおよびECと錯体形成が認められ、リポソーム封入も可能と予測された。実際にCu-64をリポソームに封入した結果、DOTA、TETA、NOTAでは良好な封入率が得られ、リポソーム内での錯体形成も確認できた。ECでも封入は可能だった。これらのCu-64封入リポソームを担がんマウスに投与した結果、Cu-64-DOTA、Cu-64-TETA封入リポソームでは、In-111-DOTA封入リポソームとほぼ同様の腫瘍集積、体内分布が観察された。一方、Cu-64-EC封入リポソームでは、脾臓集積の低下とCu-64の血中タンパク質結合が観察された。In-111-ECリポソームの場合、In-111の肝臓脾臓からの排出が認められており、Cu-64-ECも排出されるものの、Cu-64は生体必須金属であるために、再吸収を受けて体内に留まるのではないかと推察された。 Yについても同様の方法でリポソーム封入法の検討を進め、その後Y-88やY-90を用いて実際に放射性Y封入リポソーム調製を試みた。Y-88やY-90は入手の制限があり、検討は十分とは言えないが、その中でもY-90リポソーム調製に成功し、担がんマウスで腫瘍成長抑制効果を認めた。リポソームの安定性の向上や正常組織集積低減につき、さらなる検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療用核種のCu-64/67やY-90などは入手が難しく、これまで錯体形成や安定性、リポソームへの封入などの諸検討はほとんど進んでいなかったが、安定同位体を用いた解析方法の開発が突破口となって詳細な検討が進んだ。本年度はCu-64の供給を受けることができ、またY-88、Y-90も入手できたことから、治療用核種封入リポソームの調製に成功し、さらにそれらリポソームの担がん動物での体内動態について新たな知見を得ることができた。核医学治療、radio-theranosticsの実現に向け、着実に前進している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討によって、Cu-64/67やY-90などの治療用核種をリポソームに封入できるようになり、治療効果に関しても有望な結果が得られている。一方で、これら治療用核種の錯体形成による生体内動態制御が極めて難しいことも明らかになってきた。これまで、診断用核種In-111と治療用核種Y-90は化学的性質が類似していて、単に置き換えるだけで治療に応用できると考えられていたが、我々の検討から実際にはその性質や反応性は大きく異なっていることが示された。今後は、その違いを踏まえ、核医学治療に適した体内動態を与えるような薬剤設計を構築すると共に、radio-theranosticsを可能にするプラットフォームへの展開を図る。In-111/Y-90の組合せを中心に検討を進めるとともに、ガンマ線とβ線の両方を放出する核種Re-186を新たに導入する予定である。引き続き錯体を利用した放射性核種の体内動態制御を検討すると共に、治療用核種リポソームを担がん動物に投与した場合の腫瘍集積性、組織分布、体内での安定性等の評価を実施し、治療効果との相関性などを検討する。
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