研究課題/領域番号 |
18H05212
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 康文 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10181421)
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研究分担者 |
舘林 潤 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (40558805)
芦田 昌明 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60240818)
佐藤 和則 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60379097)
市川 修平 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50803673)
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研究期間 (年度) |
2018-04-23 – 2023-03-31
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キーワード | 希土類元素 / 内殻遷移 / フォトン場制御 / 発光ダイオード |
研究実績の概要 |
本研究では、世界最高品質の希土類添加窒化物半導体を中心に据え、ナノ構造を用いたフォトン場制御により、「電流励起発光」という新たな原理に基づく希土類イオン特有の発光機能を一段と進化させ、究極的な機能を引き出し、更なる高輝度化を目指している。 今年度、取り組んだ「光励起下でのフォトン場制御によるEu発光機能の開拓」に関して、得られた成果は以下のとおりである。<課題1> 原子レベルで制御されたEu添加技術の更なる高度化: (1)Eu添加GaN/無添加GaN多重積層構造をバッファー層として用いることにより、表面ピット密度が劇的に減少すること、(2)微傾斜基板上に成長したEu添加GaNにおいて、Just基板上に比べてEu発光が増大し、励起パワーに対する飽和特性が緩和されることを見出した。 <課題2> Eu添加GaNマイクロ光共振器におけるEu発光機能の評価:上部反射鏡として10ペアのZrO2/SiO2 DBR、下部反射鏡用DBRとして42ペアのAl0.82In0.18N/GaNを有するマイクロ光共振器において、13倍程度のEu発光強度増大を観測した。 <課題3> Eu添加GaN 2次元フォトニック結晶ナノ光共振器の設計:finite-difference time-domain (FDTD)法を用いた電磁界分布シミュレーションにより、格子定数の対称性を崩した2次元フォトニック結晶ナノ光共振器構造において100万を超える共振器Q値が得られることを見出した。 新たに導入した高エネルギーYb再生増幅器システムにより、Eu添加GaNの時間分解発光スペクトルにおいて、新たな高速成分を見出した。また、QSGW法による第一原理計算パッケージecaljの希土類系での有効性を確認するため、岩塩型希土類窒化物の電子状態計算を行い、磁気モーメントがフント則に従うことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度~31年度は主に、「光励起下でのフォトン場制御によるEu発光機能の開拓」に取り組む。すなわち、Eu添加GaNにおける希土類原子周辺局所構造と発光機能との関連を基盤として、原子レベルで制御されたEu添加技術の更なる高度化を図る。フォトン操作を可能とするナノ構造を設計し、既に保有する、ナノメートルレベルで制御された半導体薄膜作製技術と半導体微細加工技術を駆使して作製する。得られたEu添加GaNナノ構造に対して光励起下において究極的なEu発光機能の発現を目指すとともに、Euイオンとフォトン場との相互作用など、内包する物理を解明する。前項で述べたように、「Eu添加技術の更なる高度化」、「ナノ構造の設計」、「ダブルDBRマイクロ光共振器の作製とEu発光特性評価」を実施し、Eu添加GaNにおいてフォトン場制御の有効性を世界に先駆けて明らかにしつつある。また、本研究を推進するにあたり、半導体光物性を専門とする海外研究者との国際連携が有機的に進んでおり、既に国際共著論文の発表に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果を継続的に発展させながら、以下の課題に取り組む。 【課題1】光励起下でのフォトン場制御によるEu発光機能の開拓: <課題1-1> Eu添加GaNマイクロ光共振器におけるEu発光機能の評価:前年度に作製したダブルDBRマイクロ光共振器においてEu発光強度増大に関与する要因を探索する。時間分解発光特性評価を通じて、Purcell効果の発現度合いを評価する。また、共振器の形成がGaN母体からEuイオンへのエネルギー輸送効率に与える効果を評価する。一方、共振器構造として、マイクロディスク型も取り上げ、その作製と発光特性評価に取り組む。 <課題1-2> Eu添加GaN 2次元フォトニック結晶ナノ光共振器の設計: 開口の形状を考慮したFDTDシミュレーションを実施し、更なる構造の最適化を行う。 <課題1-3> Eu添加GaN 2次元フォトニック結晶ナノ光共振器のEu発光機能の評価:シミュレーションにより得られたEu添加GaN 2次元フォトニック結晶光ナノ共振器の作製を行う。また、そのEu発光機能のスタティック測定やダイナミック測定を行い、Euイオン間の強い相関に起因する超放射現象などの究極的なEu発光機能の発現可能性とEu発光強度の更なる高輝度化を検証するとともに、そのメカニズムを解明する。 【課題2】電流励起下でのフォトン場制御によるEu発光機能の開拓: <課題2-1> Eu添加GaN ダブルDBRマイクロ光共振器有するLED の作製とEu発光機能の評価:実用的な応用を念頭に、電流注入下で動作するダブルDBRマイクロ光共振器を有するLEDを試作する。得られたLEDにおいて、Eu発光機能を評価し、フォトン場制御の有効性を電流注入下で明らかにする。 観測される実験データを理論的に検証することを目的に、QSGW法による電子状態計算を希土類添加GaNについて実行する。
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