研究課題/領域番号 |
18H05220
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
池田 栄史 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (40150627)
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研究分担者 |
後藤 雅彦 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (30291553)
柳田 明進 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (30733795)
今津 節生 奈良大学, 文学部, 教授 (50250379)
佐伯 弘次 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (70167419)
高妻 洋成 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, センター長 (80234699)
宮武 正登 佐賀大学, 全学教育機構, 教授 (90745324)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2021-03-31
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キーワード | 鷹島海底遺跡 / 蒙古襲来 / 元軍船 / 鷹島1・2号沈没船 / 大型木材保存処理 / 太陽熱集積保存処理システム / トレハロース保存処理 / 現地保存船体モニタリング手法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は長崎県松浦市鷹島海底遺跡での調査知見を踏まえて、①海底における元軍船の現地保存手法を確立すること、②早急な引き揚げができないことから現在は海底での現地保存を図っている元軍船に関する新たな情報公開手法を開発すること、③今後の元軍船引き揚げを前提とした大型木材の保存処理手法を開発すること、である。 この目的に基づき、①については、本研究以前に発見した元軍船である鷹島1・2号沈没船の埋め戻し作業で採用していた特製銅網や砂嚢袋で船体を覆う手法を改め、細砂を用いて完全に埋め戻して、その上を酸素不透過シートで覆う作業を行い、その後の経過をモニタリング調査することにした。②については、鷹島1・2号沈没船の詳細画像の撮影を行い、これを基に三次元画像を作成し、公開する予定である。③については、これまで世界的に用いられていたポリエチレン・グリコール(PEG)ではなく、糖類の一種であるトレハロースを用いた保存処理手法の開発を図ることとする。 この中で、当初は平成30年度に完成予定であった③に関係する施設について、設置場所である長崎県松浦市鷹島水中考古学研究センター建物の改修が遅延したことから、平成30年度予算の一部を平成31(令和元)年度前半に繰り越して対応した。 繰り越し予算では平成31年3月中に耐熱シートを用いた簡易型大型木材保存処理槽を設け、これに太陽熱を利用した温水循環装置を取り付けて処理液温度を一定に保つシステムを設置し、平成31年4月に可動実験、7月以降に実際の運用を開始した。大型木材の保存処理剤にはトレハロースを用い、令和2年3月末には保存処理槽温度65℃前後、処理液温度60℃、トレハロース濃度40%まで到達している。保存処理作業は順調に進行しており、令和3年3月末の本研究終了段階までにはトレハロースによる大型木材保存処理に関する膨大なデータが得られると予測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では当初、平成30年度中に大型木材保存処理作業に用いる太陽熱集積大型木材保存処理プラントを完成予定であった。しかし、設置場所である長崎県松浦市鷹島水中考古学研究センターの建物を管理する松浦市において、改修予算の議会承認が遅延したことから、本研究による新たな保存処理プラントの設置ができず、平成30年度予算の一部を平成31(令和元)年度に繰り越すこととなった。 繰り越し予算では平成31年3月中に耐熱シートを用いた簡易型大型木材保存処理槽を設けるとともに、これに太陽熱を利用して処理液温度を一定に保つ温水循環装置を取り付けたシステムを設置した。その後、平成31年4月に可動実験を開始し、7月以降からは稼働実験の成果を踏まえて実際の運用を開始した。大型木材の保存処理剤にはトレハロースを用い、トレハロース濃度を徐々に引き上げ続け、令和2年3月末には保存処理槽温度65℃前後、処理液温度60℃、トレハロース濃度40%まで到達した。 太陽熱集積システムは思いの外、熱効率がよく、また耐熱シートを用いた保存処理槽の保温効果も高く、大型木材の保存処理作業は順調に進行している。現在の進行状況であれば、令和3年3月末の本研究終了段階までにはトレハロースによる大型木材保存処理に関する膨大なデータと保存処理に伴う実作業に関する経験が得られることとなる。 なお、トレハロースによる保存処理の有効性に関して、保存処理進行中の木材に対するトレハロースの作用に関する観察データが蓄積されつつあり、従来、大型木材の保存処理剤として用いられてきたポリエチレン・グリコール(PEG)との比較検討が可能となった。 また、本研究では平成30年度繰り越し予算による研究とともに、平成31(令和元)年度研究を並行して進めた結果、引き揚げ後の大型木材保存処理技術に連動する引き揚げ前の海底保存手法に関する実験の創出に繋がっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は長崎県松浦市鷹島海底遺跡での調査知見を踏まえて、①海底における元軍船の現地保存手法を確立すること、②早急な引き揚げができないことから現在は海底での現地保存を図っている元軍船に関する新たな情報公開手法を開発すること、③今後の元軍船引き揚げを前提とした大型木材の保存処理手法を開発すること、である。 ①については、本研究以前に発見した元軍船である鷹島1・2号沈没船の埋め戻し作業で採用していた特製銅網や砂嚢袋で船体を覆う手法を改め、細砂を用いて完全に埋め戻して、その上を酸素不透過シートで覆う作業を終了した。今後は採用した埋め戻し手法の有効性を確認するため、埋め戻した船体の周辺に新たに設置したモニタリング試材を利用して、新たな埋め戻し手法採用後の酸素濃度の推移などに関する経過観察を継続的に進める。 ②については、新たな手法にうよる埋め戻し作業と並行して、鷹島1・2号沈没船詳細画像の撮影を終了していることから、撮影した詳細画像を基に三次元画像を作成するとともに、鷹島海底遺跡を管轄する松浦市教育委員会と協力しながら、VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)を含めたさまざまな情報公開コンテンツを作成する。 ③については、鷹島海底遺跡出土の大型木材について、これまで世界的に用いられていたポリエチレン・グリコール(PEG)ではなく、糖類の一種であるトレハロースを用いた保存処理作業に着手している。今年度はこの作業を継続して、大型木材の保存処理に要する期間、トレハロース量を含めたコストなどの知見を取得する。また、トレハロースによる保存処理後の大型木材の変化について継続的な観察を行う。また、大型木材保存処理のために製作した太陽熱集積大型木材保存処理プラントを継続的に運用し、今後の鷹島1・2号船引き揚げに向けた保存処理作業に関する情報を蓄積する。
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