研究課題/領域番号 |
18H05230
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
畑中 吉治 大阪大学, 核物理研究センター, 特任教授 (50144530)
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研究分担者 |
谷畑 勇夫 大阪大学, 核物理研究センター, 特任教授 (10089873)
三島 賢二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (20392136)
川崎 真介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (20712235)
槇田 康博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (30199658)
渡邉 裕 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50353363)
岡村 崇弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (90415042)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | 原子核(実験) / 素粒子(実験) / 超冷中性子 / 電気双極子モーメント |
研究実績の概要 |
UCN源各部(UCN生成部、液体重水素モデレータ、室温重水モデレータ、超流動ヘリウム容器、3He熱交換器)の配置と形状をモンテカルロシミュレーションにより最適化した。TRIUMFのビームパワーである500MeV×40μAの陽子ビームに対する超流動ヘリウムへの入熱は数値計算から10Wである。UCNを効率的に生成するためには陽子ビーム照射中も超流動ヘリウム温度を1 K程度に保たなければならない。超流動中のフォノン密度はその温度とともに上昇し、UCNがフォノンからエネルギーを得る逆反応によって失われてしまうからである。そのため、3Heを減圧することで低温を達成するヘリウム冷凍機を設計・製作した。冷却に用いる3Heガスは真空ポンプで排気後、循環して再利用される。室温から導入された3Heは大気圧の液体ヘリウム4槽で4.2Kに冷却され、次いで750Paに減圧され1.6Kに保たれた液体ヘリウムの満たされた1Kpot内で冷却される。1.6Kに冷却されて、3Heはジュールトムソンバルブを通じて断熱膨張することで1K以下に冷 却される。本設計では対向流型熱交換器を複数採用することで蒸発ヘリウム4の顕熱を十分に利用して3Heを予冷する。使用する熱交換器は数値計算より形状を最適化し、テスト器を製作し熱交換率測定を行った。テストでは、4Heガスを用い室温からの冷却を行い、冷却能力10Wに対応する3Heガス流量1.15g/s相当する流量に対し、十分な熱交換効率が得られることを確認した。この結果を用いてヘリウム3冷凍機を製作した。 TRIUMFでプロトタイプUCN源を運転し、UCN生成システムの検証とnEDM測定装置の要素開発を行った。500 MeV、1μAの陽子ビームを60秒間照射し70,000のUCN取り出し、UCN源内での寿命38秒を観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘリウム3冷凍機が予定通り完成し、nEDM測定装置の要素開発が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
プロトタイプのテスト結果を踏まえて、液体3Heと超流動ヘリウム間の熱交換器の実機を製作する。3Heガスが入手困難なため、1.2Kまでの冷却が可能な4Heを用いてテストを行う。熱交換器の性能を確認後、冷凍機を含む装置一式をTRIUMFに移送し、冷凍機の再組立てを行い真空、冷却等の健全性を確認する。TRIUMFで製作される液体重水素(LD2)モデレータとUCN生成部を接続し、UCN源を完成する。超流動ヘリウムをUCN生成部に貯蔵し、超流動ヘリウム中の温度測定を行い、超流動中の熱伝導を測定する。陽子ビームを用いたUCN生成実験を行い、輸送ガイド管等nEDM測定装置の要素開発を継続する。 500MeV、40μAでの連続運転を行えるよう、中性子生成標的を遠隔で脱着する機構を製作する。これは、放射化した標的の保守・交換の行う上で不可欠である。また、UCN生成中にnEDM装置のアクセスができるよう、必要なシールドを構築する。 アクティブ磁気シールド設計のために、nEDMセル領域の背景磁場の三次元マッピングを行う。並行して、小型磁場補償コイル系を製作し、磁場モニター、背景磁場の長時間安定性と短時間擾乱の制御をテストする。得られる結果をもとに、実機を製作する。数値シミュレーションに基づき、磁気シールドルームの構造設計を行い発注・製作を行う。磁気シールドルーム内に一様磁場生成コイル、シムコイルを設置し、nEDMセル領域の三次元磁場分布をマッピングする。得られた測定結果をもとにモンテカルロ計算を行い、偏極Cs磁力計の設置場所、フィードバックシステムを最適化する。 UCN源およびnEDM装置の安定稼働を確認し、陽子ビームパワー20 kWでの測定を開始する。
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