研究課題/領域番号 |
18H05231
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久野 良孝 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30170020)
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研究分担者 |
佐藤 朗 大阪大学, 理学研究科, 助教 (40362610)
東城 順治 九州大学, 理学研究院, 准教授 (70360592)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | ミューオン / 稀崩壊 / 荷電レプトン / フレーバー |
研究実績の概要 |
素粒子物理学のより深い理解のため、標準理論で説明できない新物理現象の探索は最重要課題である。荷電レプトンのフレーパ一転換現象は、標準理論枠内では起きないとされ、かつ多くの新物理の理論が将来観測可能なレベルで発生すると予言しており、新しい物理を発見するペストのひとつと考えられている。荷電レプトンのフレーパ一転換で最も重要な過程の一つは、ミューオン電子転換過程である。我々は、東海村のJ-PARC陽子施設において世界最高強度パルスミューオンピームを建設し、ミューオン電子転換過程を現在の上限値を100倍上回る実験精度で探索するCOMET Phase-I実験(J-PARC E21実験)を推進し準備している。この実験は2023年以降に開始することになっている。本研究の目的は、この実験精度を当初のさらに数倍向上し測定を確実なものにすることである。 COMET実験での主たる検出器は円筒型ガスドリフトチェンバー(CDC)である。2019年度の実績は以下のようである。まず、CDCの読み出し装置に対する中性子やガンマ線による放射線損傷の評価が重要であり、既存の施設を用いて照射実験を行い、動作確認をすることができた。夏には、取り付け機構を作成しCDCに104台の読み出し装置を全数設置した。その後、高エネルギー加速器研究機構の富士実験室で宇宙線を用いてCDC全体の性能試験を行った。これまでの結果では、CDCの位置分解能や検出効率は実験の要求性能を満たしていることがわかった。さらに宇宙線試験を継続しさらなる最適化を目指す。また、中性子照射試験から読み出し装置に使われるFPGAのソフトエラーについても評価した。自動復帰ソフトウエアプログラムやメインシステムからのダウンロード機構を準備した。トリガーカウンターについては、当初のPMTの代わりとして耐放射線性シリコンPMの可能性を調べ始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度には、COMET実験の主たる検出器である円筒型ガスドリフトチェンバー(CDC)について、その読み出し装置を全数(104台)設置することができ、CDCの全チャンネルが動作することを確認することができた。宇宙線を用いた試験を開始し、その性能評価をした、位置分解能や検出効率はCOMET実験の当初の要求を満足するものであることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は新型コロナウイルスの影響で計画どおりに研究が進められるかどうか不明な点は多い。しかし、引き続きソレノイド磁石の冷却容器の製作を継続する。2018年度には冷却容器の外筒と内筒を製作した。2020年度は両側の端板を製作する予定である。また、CDCについては宇宙線を用いた実験が終わった後、J-PARCでの受け入れ準備ができた段階で、つくばから東海村のJ-PARCにCDCを移設することを検討する。
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