研究課題
荷電レプトンのフレーパ一転換現象は素粒子物理学の標準理論枠内では起きないとされるが、標準理論を超える多くの新物理モデルの理論では、将来観測可能なレベルで発生すると予言している。したがって、新しい物理を発見する最善の物理過程のひとつと考えられている。荷電レプトンのフレーパ一転換で最も重要な過程の一つは、ミューオン電子転換過程である。我々は、東海村のJ-PARC陽子施設において世界最高強度パルスミューオンピームラインを建設し、このミューオン電子転換過程を現在の上限値を100倍上回る実験精度で探索するCOMET Phase-I実験(J-PARC E21実験)を推進し準備している。この実験は2024年以降に開始することになっている。本研究の目的は、この実験精度を当初の値をさらに数倍向上し測定を確実なものにすることである。COMET Phase-I実験では、ミューオン電子転換過程からの電子の運動量を正確に測定する主要な検出器として円筒型ガスドリフトチェンバー(CDC)が使用される。CDCは1Tの磁場中に配置される。2021年(R3)度の実績は、次のようにまとめられる。CDCは磁石の内部の密封した空間に配置されるため、CDCの読み出し電子回路の発熱が問題となる。積極的にこの熱を取り除く設計が必要である。そうでないとFPGAが誤動作する可能性がある。そこで、読み出し回路の、特に最も熱くなるFPGA素子の部分に冷却ヘッドを接触させ水冷で冷却する設計が検討された。2021年度には、この読み出し電子回路の冷却システム試作器が製作された。実際の冷却温度などを調べながら設計に改良を重ね、最終的に要求を満足する性能を出す事ができた。したがって、水冷パイプを外部からCDCの端面に持っていき、100台余りのFPGAを冷却するシステムを完成する事ができた。
2: おおむね順調に進展している
2021年度には、COMET実験の主たる検出器である円筒型ガスドリフトチェンバー(CDC)は磁石の内部に配置されるため、読み出し電子回路の発熱が問題となる。積極的にこの熱を取り除く設計が必要である。読み出し回路の特に最も熱くなるFPGAの部分に冷却ヘッドを接触させ水冷で冷却するシステムを完成する事ができたから。
新新型コロナウイルスの影響の後も地政学的な問題があり不透明感が拭えないが、引き続き、CDCの開発を進める。電子回路の冷却システムが完成した後は、J-PARCでの受け入れ準備ができた段階で、つくばから東海村のJ-PARCにCDCを移設することを検討する。2024年度以降でのCOMET Phase-I実験の開始に向けて準備をする。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件)
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