研究課題/領域番号 |
18H05238
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 真司 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40239968)
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研究分担者 |
セット ジ・イヨン 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (20530827)
石榑 崇明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00291162)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | 光ファイバレーザ / 光計測 / デジタル信号処理 / 短パルスレーザ / 波長可変レーザ |
研究実績の概要 |
可飽和吸収素子(SA)に関しては、モスキート法によりシングルモードCNT添加導波路SAを作製し、安定した単パルス発振を実現するとともに、四光波混合にも成功した。一方、導波路SAを光ファイバモジュール化する手法を確立した。また、偏波維持(PM)光ファイバテーパファイバの実現に成功し、全PMモード同期ファイバレーザに応用した。さらに、CNT@BNNT、合成ダイヤモンド、およびマクロベンド光ファイバを用いた新規なモード同期デバイスを実現した。 オムニポテントファイバレーザに関しては、波長2μmでの双方向受動モード同期に成功するとともに、自己発振波長掃引を初めて見出した。また中赤外波長領域においてグラフェンが高い光非線形特性を持つことを明らかにした。波長1μmにおいても分散の最適化によりレーザ単体から超広帯域スペクトルのパルス発生に成功した。さらに、双方向のみならず、2波長および2偏波でも同時発振受動モード同期を実現した。波長掃引光源については、波長掃引と回折格子の分散とを組み合わせることで非機械的なビームスキャニングが可能であることを示した。 デジタルフロンティア光計測に関しては、デジタルコヒーレント方式を分散チューニング波長掃引OCTシステムに適用することにより、位相不確定性から生じる問題を除去できることを示した。さらに、圧縮センシングの適用を提案し、実証した。また、多光子顕微鏡およびSRS顕微鏡についての共同研究も進めている。LIDAR/3次元計測については、AMCW3次元レーザスキャナに新しい手法、2周波数振幅変調、高速偏波スクランブリング、ベッセルビーム光学系を導入することでシステムの大幅な性能改善を実現した。LIDARにおける光超短パルスのタイミング抽出を行う新しいデジタル信号処理手法を提案し、疑似ランダム信号で変調された超短パルス列の復元に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記した通り、本研究では当初の研究計画で予定していた研究の順調な進展があるのみならず、一部では想定以上に研究が進展しており、それらに加えて下記のような多数の予見しない新たな展開にもつながっている。 1.モスキート法CNT添加導波路を用いた4光波混合(FWM)によるアイドラ光の生成 2.新規なモード同期デバイス:CNT@BNNT、合成ダイヤモンド、およびマクロベンド光ファイバ 3.CNT@BNNTを用いた短共振器・高繰り返しFPモード同期ファイバレーザ 4.自己発振波長掃引双方向ファイバレーザ 5.2波長/2偏波同時発振受動モード同期ファイバレーザ 6.分散チューニングレーザと回折格子による非機械的なビームスキャニング 7.圧縮センシング(CS)を分散チューニング波長掃引OCTシステムに適用 8.AMCW3次元レーザスキャナのスペックルの偏波依存性から被測定物の素材の分類の可能性を発見 9.TOF LIDARのための光サンプリングのタイミング抽出を行う新しいデジタル信号処理手法を考案 これらの本研究に関する昨年度の研究成果は、10件の学会誌論文、31件の国際会議発表、20件の国内学会発表として発表済あるいは発表予定である。その他に、国際会議で招待講演4件を行っており、本研究の注目度は極めて高いものと考えている。このように、本研究は当初の研究計画で予定していた研究の順調な進展があるのみならず、想定を超える多数の研究の進展と多数の予見しない新たな展開があり、期待以上の成果が見込まれると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
導波路型SAに関しては、これまでに確立した作製手法、モジュール化技術をもとに、最適なSAモジュールを実現する。PM光ファイバSAについても最適化を進めるとともに、CNT@BNNT、合成ダイヤモンド、およびマクロベンド光ファイバを用いた新規なSAについてもさらなる研究を進める。グラフェン装荷導波路を微小リング光共振器との組み合わせにより光非線形性を増大させて光コム発生を目指す。 オムニポテントファイバレーザについては、CNT@BNNTを利用した短共振器モード同期ファイバレーザのさらなる高出力化・高繰り返し化を進めるとともに、高希土類ドープガラス導波路による高繰り返しモード同期チップレーザを実現する。また、従来の波長1.5μmだけでなく、波長1μm帯および波長2μm以上の中赤外波長への展開を図る。モード同期方式として、グラフェンSA/光変調器および励起光変調方式を検討する。デュアルコムモード同期ファイバレーザについては、双方向のみならず、2波長および2偏波モード同期ファイバレーザの研究を更に進める。広帯域光周波数コムについても、超広帯域モード同期YDFLをシードとした超広帯域SC光周波数コムの実現を目指す。 デジタルフロンティア光計測については、分散チューニング波長掃引OCTシステムへ偏波ダイバーシティを加えることで、複屈折特性の計測を可能するとともに、圧縮センシングのさらなる高度化に取り組む。また、超広帯域SC光周波数コム/デュアルコムを利用したガス・環境センシングの研究を進める。AMCW3次元レーザスキャナに関するこれまでの研究成果を統合し、メートル級の測距距離と高い分解能を併せ持つシステムを完成させ、実用化を推進する。さらにスペックルの偏波依存性から被測定物の素材を分類する検討を進め、深層学習などのデジタル処理技術の導入も検討する。
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