研究課題/領域番号 |
18H05241
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北村 隆行 京都大学, 工学研究科, 教授 (20169882)
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研究分担者 |
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20534259)
澄川 貴志 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80403989)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | ナノ構造 / メタ界面 / 力学 / マルチフィジックス / 設計 |
研究実績の概要 |
令和元年度の研究実績は、以下のように纏めることができる。1.負荷が加わった際のナノ要素の変形挙動を精度良く特定するために、透過型電子顕微鏡(TEM: Transmission electron microscope)内でのその場観察負荷試験を実現する専用の微小負荷装置を開発した。TEM用のロッド状ホルダの先端に対して負荷機構が設けてあり、メタ界面から取り出したナノ要素を搭載したカートリッジを設置して負荷を与えることができる。カートリッジ上へのナノ要素の搭載は、負荷装置への設置前に現有のプローブを用いて実施するが、その後カートリッジをハンドリングする際、微小振動によりナノ要素が破損する。このため、カートリッジ上に搭載したナノ要素を一度切断し、負荷装置に設置後、TEM内で切断部の接着を行う手法を考案した。本手法の有効性を確認した結果、一度切断した試験片の接着に成功し、引張負荷を与えて試験片中央を破断させるができた。2. 一般的に疲労特性が延性と相関があること、および、らせん形状要素は延性が高いことに着目し、金属ナノ要素が集合したメタ界面に繰り返し負荷を与え、均質薄膜よりも極めて優れた強度特性を有することを明らかにした。3. 第4年度以降におけるマルチフィジックス特性の検討を行うために、フェーズフィールド法を用いたシミュレーション方法を確立し、ナノドットの渦状分極の変化に適用して適切な解析が行えることを示した。4. 第4年度以降におけるマルチフィジックスを対象とした実験を計画に先行して開始した。強誘電材料であるチタン酸バリウム(BaTiO3)のナノ試験片を作製し、TEM内での負荷試験によって、ナノドメインの変化の様子を特定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、研究計画の上では「本格始動段階」としての位置づけであり、申請時の具体的内容は、1. 要素の力学設計、2. マニピュレーター・微小負荷装置の開発、および、3. ナノ要素単体の力学特性評価、である。申請時の予定に沿って、ナノ要素の力学設計を行った。TEM内でのその場観察実験を想定し、マニピュレーターを用いた試験片の設置からTEM内までの移動時に、ナノ要素の破壊を抑制することが可能な微小負荷装置及び手法の開発を行った。本装置を用い、TEM内でその場観察負荷試験を実施し、所望の実験を実現できていることを確認した。第4年度以降の計画の一部を前倒し、解析手法の整備とマルチフィジックス実験を行った。研究過程において、ナノ要素の把持等に関する幾つかの問題が発生したが、対策を実施し、研究計画を達成した。研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って研究を実施する予定である。令和2年度の計画は、“実験・解析の対照”、“メタ界面の力学特性評価”、および、“力学設計”を実行する。研究を遂行する上で問題点が生じた場合には、適宜対策および代替案を模索し、当初の研究目的の達成を目指す。具体的には以下の内容を実施する。1. 実験によって得られたナノ要素単体およびナノ構造メタ界面の挙動とマルチスケール力学解析によって結果を対比し,その力学に着目して現象の詳細を解明する予定としている。2. 令和元年度にその一部を開始しており、ナノ構造メタ界面を含む供試材を割断してカンチレバー型の試験片を作製し、その繰り返し力学応答特性(疲労強度)を実施した。加えて、力学負荷を受けたナノ構造メタ界面に対する直接的なその場観察を実現するマイクロ試験片の作製に成功しており、FE-SEM内での力学負荷実験を行う。3. 目的の力学特性を実現する要素形状の設計を行い、力学実験を実施する。
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