研究課題
令和2年度の研究実績は、以下のように纏めることができる。1.ナノ材料のマルチフィジックス特性における実験と解析の対照を行うために、チタン酸バリウム(BaTiO3)ナノ試験体を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)の内部で負荷試験を実施した。TEM観察によって、ナノ試験体中のナノドメイン構造を特定した。ナノドメイン構造は結晶方位に依存することを利用して、負荷軸に対して垂直および斜め45度のドメイン壁を有する試験体を用意した。両試験片ともに負荷によって分極方向が変化し、ドメイン構造が消失する様子が得られた。フェーズフィールド法を用いたマルチフィジックス解析により、試験体と同様の分極の様子が再現されることに成功した。2. 異なる物性を示す材料としてモット絶縁体である酸化バナジウム(VO2)に着目した。モット絶縁体は、温度変化によって金属-絶縁体遷移を起こす材料であり、その遷移に伴って特定の結晶軸の伸び縮みを生じることから、逆にひずみを与えることでその特性を制御できる可能性がある。VO2ナノ薄膜に対する力学的負荷試験により、ひずみ量に依存して抵抗-温度曲線に変化が生じることを定量的に明らかにした。3. メタ界面の力学設計指針として、力学的に特徴のある構造(座屈構造)を有するメタマテリアルを設計し、3Dプリンタを用いて試験体を作製してその特性を評価した。設計した構造は欠陥に対する力学的な感受性が極めて低く、将来的に当該構造をナノ界面に適用できた場合には、強度的に優れた界面を実現できる可能性を示した。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度は、研究計画の上では「中核段階」としての位置づけであり、申請時の具体的内容は、1. 実験・解析の対照、2. メタ界面の力学特性評価、および、3. 力学設計である。申請時の予定に沿って、まず実験・解析の対照を行った。前年度開発したナノ試験体に対するTEM内その場観察力学試験手法を用い、結晶方位とそれに伴うドメイン壁の方向を制御した試験体を作製し、その力学応答について実験と解析を実施した。本内容は次年度実施する内容も含まれており、前倒しで実施した。メタ界面の力学特性評価実験については、前年度すでに終えており、特定の形状に制御したメタ界面により、優れた強度特性を実現できることを示している。力学設計については、メタ界面の新たな力学特性の可能性を示すために、座屈構造を積極利用したメタマテリアルを設計し、欠陥に対する優れた機械特性を証明するに至っている。コロナ事情による研究計画の一部遅延が発生したが、その後対応を行うことで解決した。次年度実施予定のマルチフィジックス試験装置の開発も前倒しで進めており、研究は順調に進展している。
当初の計画に沿って研究を実施する予定である。令和3年度の計画は、“機能性材料メタ界面作製手法・マルチフィジックス試験装置の開発”、“メタ界面の力学特性評価”、および、“ナノ要素のマルチフィジックス特性評価とメタ界面の設計”である。機能性メタ界面の作製手法は、動的斜め蒸着法及びフォトリソグラフィ法の採用を計画している。マルチフィジックス試験装置については、サンプルへ負荷を加えた状態で計測のできるプローブ顕微鏡システムの開発を行う予定であり、その仕様については、決定済みである。メタ界面の力学特性評価を引き続き実施し、チタン酸バリウムもしくは酸化バナジウムで作製したメタ界面に対して、その特性評価実験を実施する予定である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (23件) (うち国際共著 18件、 査読あり 23件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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