研究課題
今年度は、これまでに開発してきた金属酸化物ナノワイヤ構造を用いた夾雑環境下における分子認識に取り組んだ。実センサデバイス動作において特に問題となるのが、空気中に多量に存在する水分の影響である。そこで我々は、極めて除湿能力の高いZnO/TiO2/CaCl2コアシェル型ヘテロ構造ナノワイヤを新たに創製した。このヘテロナノワイヤをセンサ検知部の前段においたハイブリッド分子センサを作製し、様々な揮発性有機化合物分子を吸着することなく、空気中の水分を選択的に除去し、湿度90%以上の環境下で有機化合物の検出限界を20倍以上向上可能であることを見出した。この除湿機構は高い堅牢性も有しており、繰り返し動作においても除湿能力・選択性を維持する。また、1024chクロスバーセンサアレイセンサ構造の堅牢な集積戦略として、新たに横型チャネル形状が優れた抵抗制御性を発現することを見出した。従来構造と比較して寄生配線抵抗に由来する不安定性を大幅に抑制可能であり、大気中500℃までの熱安定性を獲得した。本センサアレイシステムを用いることで、揮発性有機化合物の空間濃度分布を検出することに成功した。前年度までに取り組んできた酸化亜鉛ナノワイヤを流路内に成長させた細管を用いることで、核酸成分の分離にも成功している。さらに、これまでに開発してきた分子検知・識別・解析技術を総動員することで、ヒトの呼気成分から個人を識別する個人認証技術の実証に成功した。機械学習を通して呼気センシングにより得られたデータ群を分析することで、20名を対象とする個人認証を97%以上の高精度で達成している。本技術は膨大な呼気分子群の化学情報を利用するという点で既存の個人認証技術とは大きく異なるものであり、生体認証における偽造防止やなりすまし防止といった応用が期待される。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 5件)
ACS Nano
巻: 16 ページ: 8630~8640
10.1021/acsnano.1c10728
Nano Letters
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