研究課題/領域番号 |
18H05247
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
冨重 圭一 東北大学, 工学研究科, 教授 (50262051)
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研究分担者 |
近藤 寛 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (80302800)
中山 哲 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (10422007)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | 固体触媒 / バイオマス / 二酸化炭素 |
研究実績の概要 |
酸化セリウムを触媒とした二酸化炭素と水酸基の反応により、有用な化学品を合成する反応において、反応の促進剤+反応系からの脱水剤として非常に有効であることが知られてきた2-シアノピリジンを代替する化合物の開発を行っている。1,6-ヘキサンジオールと二酸化炭素が交互に重合したポリカーボネートジオールの合成において、2-シアノピリジン代替として2-フロニトリルが有効であり、特に生成するポリマーの重合度が向上することを示した。これは、水和物であるアミドがポリマー鎖末端をキャッピングすることで重合が抑制されるが、計算化学による解析から、2-シアノピリジンからのアミド(2-ピコリンアミド)と比較して、2-フロニトリルからのアミド(2-フルアミド)の方が酸化セリウム表面のとの相互作用が弱いことが示された。 また、固体触媒を用いた隣接する水酸基を炭素―炭素二重結合へと変換する脱酸素脱水反応系の開発については、シス位に隣接する水酸基を持つメチル化された単糖と水素から、触媒としては金微粒子で修飾した酸化セリウム担持酸化レニウム触媒を用いて、基質の6員環部分に炭素―炭素2重結合ともった糖を高収率で得ることに成功した。この結果の中で注目すべき点として、反応する水酸基からさらに一つ遠い炭素に結合する官能基の種類や向きによって反応速度が大きな影響をうけていることが分かった。今後これらの反応性傾向が活性点上に吸着した基質から生成物へと変換していく際の遷移状態との関連性を検討していく必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高性能な固体触媒の開発は、未利用な資源も含む炭化水素系資源の効率的変換を可能にすることが期待され、持続可能社会の構築のために重要な技術として位置づけられ、同時に触媒開発のキーとなる触媒活性点の設計は学術的に非常に重要な課題である。本研究は、酸化・還元や酸・塩基などの様々な反応に有効な新しい触媒活性点を、分子・クラスターと金属・金属酸化物の粒子表面との直接相互作用により構築することを目的とする。特に、分子・クラスターおよび金属・金属酸化物表面それぞれの単独の成分がもつ特性とは異なる触媒機能や性能を、2つの成分のシナジーにより創出させる新しい触媒設計法の確立を目指す。また、得られた知見を活用し、貴金属などの高価で資源制約の厳しい元素を安価な元素へと代替する方法論も検討する。これらの課題について、触媒化学、表面化学、計算化学を駆使して取り組む。具体的な3つの課題は以下のとおりです。 1)酸化物表面上の高原子価遷移金属酸化物種 2)金属表面上の低原子価遷移金属酸化物種 3)酸化物表面と塩基性有機分子の直接相互作用による強塩基点の構築 である。1)については、金微粒子で修飾した酸化セリウム担持酸化レニウム触媒を用いることで難易度の高い反応を実現することができた。同時に、それらの速度論解析から基質と活性点との相互作用について興味深い傾向が示されており、今後の触媒設計に活用することを検討している。2)については、主として計算化学的アプローチによる水素分子活性化機構の検討を行ってきている。3)については、2-シアノピリジン代替として、2-フロニトリルの有効性や、準大気圧下X線光電子分光の基礎的な結果も見出されており、全体の進捗として、順調に進んでいるとみなしている。
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今後の研究の推進方策 |
1)酸化物表面上の高原子価遷移金属酸化物種 2)金属表面上の低原子価遷移金属酸化物種 3)酸化物表面と塩基性有機分子の直接相互作用による強塩基点の構築 1)のシーズ触媒となっているパラジウムや金の微粒子で修飾した酸化セリウム担持酸化レニウム触媒については、例えば、メチルグリコシドなど、有効な基質の展開が広がりつつある。基質の反応性比較から、遷移状態など反応機構に関する知見も深まりつつあり、計算化学と放射光を用いた状態・構造解析を組み合わせることで、触媒活性点、特に基質と相互作用した触媒活性点の理解が深まることが予想できる。さらに、これらの結果も踏まえて、レニウム代替関する研究も開始する。2)については、炭素―酸素結合水素化分解反応について多くの知見が得られており、水素分子の活性化、特に不均等解離によるヒドリドとプロトンの生成がキーとなっていると考えられている。計算化学やX線光電子分光法のよる解析など準備も整いつつあり、2019年度より本格的に検討を始める。これらの解析結果も踏まえ、貴金属代替などについても検討を開始する。3)については、ポリカーボネートジオール合成については、2018年度の研究から2-シアノピリジン代替としての2-フロニトリルの有効性をある程度示すことができている。これらを踏まえ、様々な反応に展開していくこととする。同時に、これらの化合物と酸化セリウムの相互作用による強塩基点生成の分光学的観察を行う。
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