研究課題/領域番号 |
18H05248
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
淡路 智 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (10222770)
|
研究分担者 |
柁川 一弘 九州大学, 超伝導システム科学研究センター, 准教授 (10294894)
岡田 達典 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (50793775)
高橋 弘紀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60321981)
BADEL ARNAUD 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (00836017)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 超伝導マグネット / 高温超伝導 / 強磁場 / クエンチ / 遮蔽電流 |
研究実績の概要 |
本研究では,50T超伝導磁石開発を目指して高温超伝導磁石技術の構築を目的とし,①伝導冷却を見据えたコイル化技術,②高い電磁力に対する機械的変形と補強,③クエンチ(熱暴走)現象の理解と保護,④交流損失と不斉磁場の4項目に対して研究を推進している。最終年度に25T無冷媒超伝導磁石(25TCSM)の内層コイルによる実証と無冷媒超伝導磁石の世界記録更新を狙っている。本年度は,個々の研究テーマを分担して推進すると共に,25TCSM用内層コイルの概念設計を行った。これに伴い,高温超伝導テープ2枚バンドル巻きコイルを作成し,その挙動について詳細に調べた。コイル試験の結果から,530MPaの大電磁力下では,コイルの変形挙動は巻線が独立に動作するモデル(BJRモデル)と一体に変形するモデル(Wilsonモデル)の中間となり,発生磁場の挙動から共巻きした線材のカップリングの影響が強くあらわれることが分かった。またそのカップリングの影響について交流損失と不斉磁場を解析した結果,結合による損失はテープ幅方向の損失の約2倍となるが,最大となる磁場が大きく異なることが分かった。また,数値解析により,局所劣化によるクエンチ(熱暴走)に対して,数mVの検出によって保護が可能であることが分かった。この結果は,以前に起きた25TCSMのクエンチ結果を再現できる結果である。さらに,サーモグラフィの計測系は概ね立ち上がり,単線を用いたクエンチ測定を行っているところである。これらの結果について国際会議5件(うち2件は招待講演),論文4件,国内会議3件の発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に予定していたパンケーキコイルによる基本的測定といくつかの評価装置の立ち上げは,概ね予定どおり終了した。コイル試験では電磁力下の挙動及び,線材同士の電磁的結合によると思われる新たな現象の観測にも成功し,現在のコイル巻線及び含浸方法が概ね良好であることが分かった。同時に,高電磁力下のコイル変形挙動についても,コイル表面のひずみ測定によって理解することができた。クエンチ解析においては,計算によりこれまで得られているが理解が難しかったクエンチ挙動を概ね再現することができ,有効な検出電圧を決めることが可能となった。また測定に関しても短尺線の測定が概ね可能となった。超伝導テープ内の磁化とテープ間結合による交流損失計算も概ね解析方法が確立し,試験用コイルを現在は作製している。このように,予定していた初年度の研究は概ね終了し,得られた結果も良好である。招待講演を含む発表は国際5件,国内3件のほか,4編の論文も出版した。
|
今後の研究の推進方策 |
30T無冷媒超伝導マグネットの内層コイル開発を実施するため,複数本バンドルしたコイルについて,目的であげた4つの課題に関して基礎的なR&Dを実施し,上記のように多くの重要な知見を得た。さらに,数値解析を進め,クエンチ・交流損失・不斉磁場に関するモデル構築が概ね終了した。今後,これらの解析と実験結果の比較を行うことによってモデルの精度を高めるとともに,さらに補強や積層数の増やしたコイルへの拡張を行う。これと平行して,現在の30T無冷媒超伝導自社奥の概念設計から,より精度の高い現実的な設計を実現し,3年目のコイル開発へと繋げる。
|