研究課題
本研究では,50T超伝導磁石開発を目指して高温超伝導磁石技術の構築を目的とし,①伝導冷却を見据えたコイル化技術,②高い電磁力に対する機械的変形と補強,③クエンチ(熱暴走)現象の理解と保護,④交流損失と不斉磁場の4項目に対して研究を推進している。最終年度に25T無冷媒超伝導磁石(25TCSM)の内層コイルによる実証と無冷媒超伝導磁石の世界記録更新を狙っている。これまでの研究によって劣化を極限まで抑え、部分的に劣化しても通電可能、さらに局所発熱が起こっても焼損に至らないロバストなコイル構造を構築することができた。これらは、希土類系高温超伝導テープを用いた強磁場マグネット開発において極めて重要な成果である。これらの構造は、初年度と2年目に行った実験結果を踏まえて構築したものである。3年目である2020年度は同技術を集約した4積層コイルを用いた実験を実施した。これによって、最終的な実証コイルへのステップを確立することができた。具体的には、高電磁力下におけるコイル変形は、線材だけでなくコイル上限に貼り付けているの薄いFRPやAlシートが少なからず補強となっていることと、最近問題となっている遮蔽電流による応力の緩和の効果があることがわかってきた。クエンチ保護の観点では、熱伝播のために焼損前に電流を下げることが可能な検出電圧が、実用レベルの値であることから従来の検出を工夫することで保護が可能であることがわかった。また、遮蔽電流と線材結合電流による交流損失は、結合による損失が大きくなることが計算によりわかったが、ピークとなる磁場低磁場となるため運転方法によってカバーできることなどもわかった。
3: やや遅れている
これまでの実績を踏まえ、提案する構造のパンケーキコイルを24積層した実証コイルを作成し実証テストを実施するが、本コイル作製には最低10ヶ月必要であり、契約1ヶ月を含めるとほぼ1年かかりとなる。本来は2020年度中に実証コイルを作製する予定であったが、追加したコイル試験のため、若干の遅れが生じ2020年度の途中から契約して年度内に実証コイルを作製することが不可能となった。このため、その制作分を翌年に繰り越さざるを得ず、進捗に遅れが生じることとなった。年度をまたぐ契約が可能になれば、半年程度の遅れとなり、ほかで吸収することも可能となったと考えられるが、今の制度上は致し方ないとかんがえられる。
現在、2020年度に実施した4積層コイルの結果を解析しているところであり、これらに関して2020年度に開催される国際会議等で発表予定である。また、すでに実証コイルの作製にかかっており、目標となる50Tを見通せるコイル化技術の実証を行う予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 17件、 招待講演 6件)
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