研究課題/領域番号 |
18H05255
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
辰巳砂 昌弘 大阪府立大学, 学長 (50137238)
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研究分担者 |
林 晃敏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10364027)
作田 敦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30635321)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | 固体電解質 / 電極複合体 / 機械的性質 / 弾性率 / 強度 |
研究実績の概要 |
2021年度は、「電極複合体構造と電気的特性に関する基盤構築」に係り、代表的なLi3PS4ガラス電解質およびLi6PS5Cl結晶電解質粉末について、成形圧、相対密度、導電率の相関を細かく比較したところ、相対密度の増加と導電率の増加の傾向に説明困難な挙動がみられ、まずは緻密化メカニズムの違いの解明が必要であることがわかった。 そこで「電極複合体の塑性領域のダイナミクスの基盤構築」に係り、機械材料試験機を用いた硫化物系固体電解質の粉末の緻密化挙動を動的測定し、硫化物系ガラスおよび結晶の緻密化挙動の違いについて従来よりも詳細に評価した。硫化物系固体電解質の弾性率は組成に依存する。特にリチウム濃度の高いイオンガラス系電解質では、平均原子容と弾性率が高い相関を有し、化学組成からおおよその弾性率を推定できる。結晶系においても、原子のパッキングはガラスと比べて大きな違いはないため、多結晶緻密成形体の弾性率はガラスのものと大きくは変わらない。一方で、成形体の強度に関しては物質間で大きく異なることを明らかにした。Li3PS4ガラスは破壊強度が高く、Li6PS5ClはLi3PS4と比較すると数分の1程度の強度である。この強度の違いが、粉末成形における緻密化挙動の差異を生んでいることが明らかになった。Li3PS4ガラスは、その強度の高さ故に、低密度成形体から粒子の微細化や再配列が生じにくく、低成形圧で粉末成形体の相対密度が低くなる傾向にある。Li3PS4ガラスの常温加圧焼結は成形圧の増加とともに進行し、空隙は徐々に減少する。400 MPaを超える高圧成形においては90%を超える極めて高い相対密度の成形体を得ることができる。緻密化初期から粒子同士が接合し、粒子同士の面接触界面を構築していくことから比較的低い成形圧から高い導電率が得られる。一方で、Li6PS5Clは破砕や再配列が緻密化挙動に含まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全固体電池の実用化が期待されている中で、固体電解質の機械的特性の評価は大学が学術的な観点で実用化に直接貢献できる極めて重要な検討課題である。一方で、これらの詳細な検討は世界でもほとんど行われていない。本研究課題においては硫化物系電解質の機械的特性評価技術を確立しつつあり、ガラスと結晶の違いの緻密化挙動の調査を進めた。検討を進める中でさらに多くの新物質の開発や電極複合体における界面形成の基盤形成に関する成果も多数得られている。
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今後の研究の推進方策 |
リチウムおよびナトリウムイオン伝導性固体電解質を用いた全固体電池の電極複合体のダイナミクスの基盤構築に関する研究を引き続き行う。 固体電解質の機械的特性の解明を引き続き行い、ガラスと結晶の緻密化挙動の違いについてより詳細な比較ができるデータを蓄積し、断面SEM観察と組み合わせてメカニズムの解明を行う。 上記研究実績の概要には記載しきれていないが、研究計画書に記載している通り、2021年度からクラック発生や界面での副反応などに関する充放電時の電極複合体の諸問題の解明に取り組んでおり、特に膨張収縮率が大きい合金系負極活物質や、全固体ナトリウムー硫黄電池の正極複合体に係る、電極複合体のダイナミクスについて、課題抽出及び解決を図る。
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