研究課題/領域番号 |
18H05256
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
飴山 惠 立命館大学, 理工学部, 教授 (10184243)
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研究分担者 |
伊藤 隆基 立命館大学, 理工学部, 教授 (40242581)
山末 英嗣 立命館大学, 理工学部, 教授 (90324673)
藤原 弘 立命館大学, 理工学部, 教授 (80320117)
川畑 美絵 (太田美絵) 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 准教授 (30710587)
下川 智嗣 金沢大学, 機械工学系, 教授 (40361977)
菊池 将一 静岡大学, 工学部, 准教授 (80581579)
中井 善一 神戸大学, 工学研究科, 名誉教授 (90155656)
塩澤 大輝 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (60379336)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | ヘテロ構造 / シナジー効果 / 高強度 / 高延性 / 高靱性 / 特異ホールペッチ則 / 加工硬化 |
研究実績の概要 |
社会基盤の骨格とも言える構造用金属材料には、「強さとしなやかさ(ねばさ)」、すなわち、強度と延性が同時に要求される。しかし、高強度と高延性の両者を同時に満たすようなことは一般には起こらず、自動車や飛行機などを始めとした輸送機器材料や橋や建物など構造材料として利用するには特別な処理や工夫が必要になり、金属材料の研究開発がどうしても必要とされる所以となる。本研究課題では、調和組織制御を基盤とした研究を進め、以下の成果を得た。 (1)高強度・高延性両立の原理:高強度と高延性が両立しない要因は、材料を様々な手法で高強度化しても加工硬化が増大しない限り、塑性不安定開始を高ひずみ側にずらす(遅らせる)ことができず均一伸びの低下を招くためである。これを改めて確認した上で、調和組織材料の加工硬化挙動を詳細に検討し、加工硬化増大が微細粒領域(Shell)と粗大粒領域(Core)の粒径勾配、さらに、Shell内部での粒径分布の拡がりを制御することがカギとなることを明らかにした。調和組織材料では、Shell網目構造に起因したCore拘束による多軸応力負荷が、これまでに積層材等のヘテロ材料で指摘されているHetero Deformation Induced (HDI)硬化に対して最大限の効果を発揮することを示唆していることを見出した。 (2)「Synergy硬化」の発見:ミクロ・マクロの相乗効果の結果である「Synergy Extra Hardening(シナジー硬化現象」を見出した。実験を行ったCu、Ni、SUS316L、CrMnFeCoNi合金において、Hall-Petch(0.2%耐力-平均粒径)関係の直線関係の傾きが調和組織材料では均一組織材料よりも大きくなり、その原因が従来のHall-Petch関係での降伏強度の考え方が調和組織材料では異なることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の通り、概ね順調に研究を進めることができ、2021年度には11編の学術論文を発表することができた。しかしながら、コロナ禍により分担者間の密な研究討論や学会参加による議論を深めることが困難な状況であり、分担者個々の研究の推進が主となった。 研究実績内容としては、当初予定していた調和組織材料の作製を引き続き行い、特に、単相材料(Ni、Cu、Cu-9Ge 、SUS316L)、複相材料(炭素鋼、Ti-15V-3Cr-3Al-3Sn合金)について調和組織材料が作製できることを明らかにした。さらに、単一粉末種でのミリング法以外に、新規開発したBiMプロセスを用いた作製を試みた。また、共通試料を他研究機関に提供し、耐食性や耐摩耗性などについて研究を推進した。調和組織材料が示す大きな加工硬化等の特異現象の起源が、変形のごく初期の転位活動と密接な関係があることを再現実験により改めて確認し、低ひずみ域で高い転位集積によって、その後の加熱で「選択的再結晶」を生じる微細粒ネットワーク部での再結晶挙動について詳細な検討を行った。 高輝度放射光施設(SPring-8)を用いた変形その場観察と変形挙動解析を行なったSPring-8ビームライン内での「その場試験システム」と4次元力学特性評価を行なった。さらに、粒界と格子欠陥の相互作用について分子動力学(MD)法で、また、多結晶体の変形挙動をMultiscale有限要素(FEM)法でシミュレーションし、調和組織材料のミクロ・マクロ変形挙動の解析を行った。ヘテロ界面領域をモデル化し、そこで生じる格子欠陥ダイナミクスを定量的に検討した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の状況を見ながら、研究を推進する。特に、共通試料を用いた研究をより一層活発に進めることで、確実な研究成果発表に繋げる。さらに、国際共同研究の推進も進め、本研究課題でカバーできていない研究領域である「耐食性」、「耐摩耗性」等の研究を国外研究者と推進する予定である。
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