研究課題/領域番号 |
18H05259
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野崎 京子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60222197)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | 再生可能資源 / 触媒 / 還元 / 結合開裂 |
研究実績の概要 |
本研究は、再生可能な炭素資源から基礎化成品を得るために必要な、高酸化状態にある炭素の還元、触媒的結合開裂反応の開発を目的とし、①炭素ー酸素結合の還元的開裂、②炭素ー炭素結合の開裂の二つの反応に注目して触媒を開発する。平成30年度は、以下の課題に取り組んだ。
特にリグニンからの芳香族炭化水素およびその類縁体合成に向け、リグニンの部分構造に多くみられるフェノール、アリールメチルエーテルに注目し、炭素ー酸素結合の選択的加水素分解触媒の開発を目指した。前年度までに両反応に活性を確認したシクロペンタジエノンのイリジウム錯体は、水素を不均等開裂することが活性の鍵となったと考えられたため、当該年度は同様に水素の不均等開裂が知られているイリジウム錯体とルテニウム錯体を中心に種々の配位子を組み合わせその活性を比較した。リグニンモデル分子を対象にした検討の結果、ルテニウムの場合には炭素ー炭素結合、イリジウムの場合には炭素ー酸素結合がそれぞれ選択的に切断される様子を観測できた。
固体触媒系については遷移金属と担体の協働作用を期待し、塩基性層状複水酸化物(LDH)にイリジウムナノ粒子を担持した触媒を作成した。種々の遷移金属触媒を検討したが、期待した担体の効果は見られなかった。一方で、リン酸塩を含む担体を用いた場合に特異的に、フェノール類の炭素ー酸素結合切断の活性が高いことが示唆される結果を得た。また、均一系のTEMPO触媒を固体触媒と組み合わせ、脂肪族カルボン酸の脱炭酸を伴うオレフィンの生成も確認した。以上の結果をもとに次年度は、金属リン酸塩を担体とし、種々の金属粒子を担持した系を集中的に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した当該年度の検討項目についてはすべて実証をおこなうことができた。均一系触媒系の成果は、予定通り次年度には論文発表に結び付ける。固体触媒系については、リン酸塩の特異性という予期せぬ発見に遭遇しており、今後、当初の予定を超える展開を期待している。
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今後の研究の推進方策 |
均一系触媒を用いる研究は今後さらに、金属ー配位子協働作用に基づく結合切断反応へと展開する。 また、不均一系触媒を用いる検討では、本研究期間中に端緒を見つけた担体の反応への関与を、広義での金属ー配位子協働作用と捉え、その反応機構についての検討を加え、他の反応への応用を図る。
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