研究課題
(1)「機械的結合」を有する代表的な分子「カテナン」を用いた多孔性結晶の開発に成功した(Nature 2021)。カテナン分子とコバルトイオンを溶媒中で加熱することで、カテナン分子が配位結合によって3次元的に配列した結晶を作製した。結晶の90%以上がカテナン分子からできていること、多数の微小な穴が空いた構造をしていることことなどを明らかにし、さらに、外から力を加えると形が変わり、力を除くと元の形に戻ることから、結晶でありながらまるでゴムのような性質を示すことを発見した。本研究成果は、指でつまんだり離したりすることで、二酸化炭素などの気体分子を吸脱着できる革新的な多孔性材料につながると期待できる。(2)「フタロニトリル」分子を原料とし、「フタロシアニン」の超分子ポリマーを無溶媒という環境負荷の少ない条件下で合成することに成功した(Nature Mater. 2022)。ポリマーの末端のフタロシアニンあるいは金属フタロシアニン上にフタロニトリル4分子が環状に配列する結果として起こる「自己触媒作用」が鍵となる。本研究成果は、持続可能な社会の実現に向けての理想的なポリマー製造プロセスの姿を示しており、大きなインパクトを与えるものである。(3)最近、機械的強度の高いガラス状高分子であるポリエーテルチオ尿素(PTUEG3)が、常温でも自己修復することを発見した。PTUEG3は高湿度下で吸水し、可塑化して機械的強度が低下する課題があった。そこで、疎水的なジシクロヘキシルメチル基を有するチオ尿素ユニットを10mol%だけ含むように共重合設計したPTUEG3が、湿度に強く、常温で自己修復可能な機械的強度を持つポリマー材料となることを見出した(J. Am. Chem. Soc. 2021)。本研究成果は、高湿度下でも使用可能な機械的強度に優れた自己修復性ポリマーの設計戦略を提供する。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していた研究項目に加え、多孔性結晶に関する発見など新たな展開が広がってきているため。
当初研究研究は現在までのところは総じて順調に達成されている。今後はこれまでに得られた成果を元に、申請時の研究計画に従った研究を遂行していくととも に、新たに見出された知見に基づいた展開も進めていく。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 11件、 招待講演 11件)
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