研究課題/領域番号 |
18H05262
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北川 進 京都大学, 高等研究院, 特別教授 (20140303)
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研究分担者 |
細野 暢彦 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (00612160)
大竹 研一 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (20834823)
Zheng Jiajia 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (50848463) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | 多孔性配位高分子 / 結晶工学 / ナノ空間化学 / 錯体化学 / 適応機能 / ガスセンサ |
研究実績の概要 |
生物は様々な環境の変化に対し自らを適応させる。この自発的適応機能を化学の視点で捉えれば、例えば分子シグナルの授受や細胞膜内外の物質移動といったナノレベルの多重な機能を協同的に連携作用させて応答を行う「流れ」の確立にある。その機能実現にはダイナミックなナノ空間が重要な役割をしている。本課題では、生物の受容、検出、移送、変換などの基本操作を材料化学的な空間素子として設計し、それらを連携させた空間にエンコードして多様な環境変化に応答する新しい概念の多孔性物質を創出することを目指す。 本研究では次の3つにテーマを分けて集中的に取り組んでいる。1. 動的ナノ空間および界面による情報の受容と変換、2. 空間ドメインの有機的複合・融合化、3. 計算化学による連携機能の統括的理解と設計。 本年度は、それぞれの課題について顕著な成果が複数得られた。特に、局所的な分子運動とホストゲスト相互作用の制御によるガス分離性能(Angew.Chem.Int.Ed.2020;Angew. Chem. Int.Ed. 2021)や、動的PCPとそれに導入した柔軟な側鎖や配位子による連動した骨格変化によってもたらされる高効率なゲスト認識(Angew.Chem.Int.Ed. 2021; Natural Science 2021)といった本課題を遂行するにあたり柱となる動的空間の機能開拓に関する研究内容が大きく進展した。PCPドメインの融合技術については、高分子との複合化による物質分離膜や、PCP結晶上に別の結晶を成長させた階層構造材料や、伝導性無機基盤上に配向制御して成長させたPCP薄膜による階層構造ナノシステムの構築を進めている。 計算化学的な課題においては、PCPの局所的な構造変化に注目し、そのローカルな構造変化が細孔空間内の静電場に及ぼす影響に注目し、ゲストの認識や分離の機構解明を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は申請書で掲げた複数の技術的課題について順調に進展がみられている。 特に、局所的な分子運動とホストゲスト相互作用の制御によるガス分離性能(Angew.Chem.Int.Ed.2020;Angew. Chem. Int.Ed. 2021)や、動的PCPとそれに導入した柔軟な側鎖や配位子による連動した骨格変化によってもたらされる高効率なゲスト認識(Angew.Chem.Int.Ed. 2021; Natural Science 2021)といった本課題を遂行するにあたり柱となる動的空間の機能開拓に関する研究内容が大きく進展した。PCPドメインの融合技術については、高分子との複合化による物質分離膜や、PCP結晶上に別の結晶を成長させた階層構造材料や、伝導性無機基盤上に配向制御して成長させたPCP薄膜による階層構造ナノシステムの構築を進めている。PCP薄膜については、希薄な化学成分の検出をするケミレジスタへの応用展開を行った(Dalton Trans. 2021)。 計算化学的な課題においては、PCPの局所的な構造変化に注目し、そのローカルな構造変化が細孔空間内の静電場に及ぼす影響に注目し、ゲストの認識や分離の機構解明を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた技術的ブレークスルーを基礎に研究をさらに展開する。特に、物質の変換および計算化学によるメカニズム考察には力を入れる。PCP細孔内の物質移動、反応および変換に関して、X線構造解析と計算化学を駆使して本質的かつ基礎的な知見を得る予定である。今後、申請書に掲げた溶融PCPの開発、および複数のPCPドメインからなる階層構造ナノシステムの構築と、それを利用した空間接合技術についての研究を加速する。
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