研究課題
酵母細胞を用いた研究:①ゴルジ体cis槽による小胞体からの積荷の受け取り。hug-and-kiss機構で積荷を受け取るcisゴルジ槽と槽成熟に向かうcisゴルジ槽との違いを、ライブイメージングによって解析した。小胞体出口ERESにおいては、COPII被覆のアセンブリーを詳細に解析し、COPII小胞遊離とcisゴルジ槽によるhug-and-kissの時空間的制御を明らかにした。②ゴルジ槽間での積荷の受け渡し。積荷の可視化により、積荷が槽から槽へと移動する様子を4Dで捉え、またその際の槽内ドメインの動態を解明した。③TGNでの複数経路の仕分けの時空間的制御。TGNにおける被覆タンパク質とアダブター複合体の集積・離散を時空間的に解析した。植物細胞を用いた研究:①ゴルジ体初期区画GECCOによる小胞体からの積荷の受け取り。ゴルジ体の最もcis側の区画(GECCO)の、生化学的な研究を進めた。分子装置の候補を同定して、その解析を進めた。②ゴルジ体層板内での積荷の輸送。植物のゴルジ層板について、SCLIM2の時空間分解能を駆使した観察を行った。③TGNでの複数経路の仕分けの時空間的制御。さまざまな被覆タンパク質およびアダブター複合体がTGNで集積・離散するダイナミクスを時空間的に解析した。AP-1とAP-4が異なるゾーンに集積することを示した。動物細胞を用いた研究:①小胞体-ゴルジ体中間区画ERGICによる小胞体からの積荷の受け取り。ERGICの挙動について、SCLIM2による解析に着手した。②ゴルジ体層板内およびTGNでの積荷の輸送。ゴルジリボンおよびTGNの観察を行い、またRUSHシステムによる積荷の動態解析を行った。③神経軸索におけるゴルジ体の役割。神経軸索成長円錐を観察し、ここにもゴルジ体が存在して機能していることを示唆した。
1: 当初の計画以上に進展している
酵母のゴルジ槽間の積荷の受け渡しについては、SCLIMを駆使して複数のゴルジ槽と積荷と4Dで観察し、槽成熟の過程で確かに積荷がcisからtransへ、そしてさらにTGNへと移動していることを示すことができ、われわれが2006年に発表したゴルジ体の槽成熟において、これが確かに積荷輸送のメカニズムであることを証明することができた。さらに、その槽成熟の過程で、成熟中の槽の中で積荷が早期のゾーンから後期のゾーンへと移動すること、そしてTGNまで移行した積荷がそれより前の槽に戻る現象も発見した。槽成熟の意義とその過程における「品質管理」の可能性について、解明への大きな一歩となった。植物と動物のゴルジ体に関する研究も順調に進んでいる。稼働を開始した次世代SCLIM機,SCLIM2KとSCLIM2Mの威力が素晴らしく、とくにSCLIM2Mでは、単一光子計測とガウス分布フィッティングによるノイズの除去,高速4D撮像データに対して自ら開発した光点分布再構成アルゴリズムを適用することにより、驚異的な時空間分解能を達成した。例えばTGNから形成されるクラスリン小胞の1個1個を3D空間で追跡することが可能になった。
生きた細胞内の小胞輸送をありのままに目で見る、というわれわれが夢にまで見た技術がついに実現できたので、予定した研究計画通り、異なる生物種のゴルジ体とその周辺オルガネラについて、徹底的な観察を行い、従来の生化学や遺伝学の実験結果に基づいて想像されていたモデルを一つ一つ検証していく。世界をあっと言わせるデータと教科書を書き換えるモデルをどんどん発表していく。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (22件) (うち国際共著 3件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (43件) (うち国際学会 14件、 招待講演 14件) 備考 (1件)
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http://sclim.riken.jp