研究課題/領域番号 |
18H05276
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平野 達也 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (50212171)
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研究分担者 |
立川 正志 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 客員研究員 (30556882)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞生物学 / 生化学 / 数理生物学 / 染色体 / 細胞分裂 |
研究実績の概要 |
(1)カエル卵抽出液を利用したコンデンシンIとIIの機能解析:分裂期染色体の構築メカニズムを理解する目的で、様々な変異型コンデンシンI複合体とコンデンシンII複合体を調整し、カエル卵抽出液を用いた機能アッセイに供してきた。2020年度は、Hサブユニットのアミノ末端ドメインがコンデンシンIの分裂期特異的染色体結合の制御に関わっているという知見をさらに強化する結果を得た。また、コンデンシンII では、D3サブユニットが染色体軸の形成に正の役割を果たしているのに対して、G2サブユニットが負の役割を果たしていることを見出した。さらに、2つのコンデンシン複合体とトポイソメラーゼIIとの機能的クロストークについていくつかの興味深い知見を得た。
(2)コンデンシンIとIIの比較生化学:2020年度は、コンデンシンI複合体とコンデンシンII複合体が有する生化学活性を比較する目的で、各種機能アッセイ(DNA結合、トポロジカル・ローディング、ATP加水分解)の確立を目指した。また、組換え型Cdk1-cyclin Bによるリン酸化がそれらの活性に与える影響の検討を開始した。
(3)コンデンシン機能の数理モデリングとシミュレーション: 2020年度は、コンデンシンがクロマチン繊維へねじれを導入する機構のモデル化に取り組んだ。コンデンシンのモデル化としては、これまでのクロマチンループ形成における自由エネルギーモデルを発展させ、クロマチンループ形成に付随的に導入させるねじれの評価を行うとともに、ねじれの導入を前提としたクロマチン繊維の構造発展を理解するためのシミュレーションモデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)カエル卵抽出液を利用したコンデンシンIとIIの機能解析: 野生型および変異型コンデンシンIとIIの機能解析から、2つの複合体に共通する性質と異なる性質についての知見が蓄積してきた。また、長年の課題であったコンデンシンIの細胞周期制御について、その複雑な制御機構の一端が見え始めてきた。
(2)コンデンシンIとIIの比較生化学:各種機能アッセイの確立を通して、2つのコンデンシン複合体の詳細な比較が可能となりつつある。
(3)コンデンシン機能の数理モデリングとシミュレーション:コンデンシンがクロマチン繊維に導入するねじれとスーパーコイル構造の力学的理解が進み、その染色体形成における役割を問う段階にきている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)カエル卵抽出液を利用したコンデンシンIとIIの機能解析: コンデンシンIの細胞周期制御におけるHサブユニットのアミノ末端ドメインとそのリン酸化の役割をさらに明確にする。コンデンシンIIの活性制御における G2サブユニットの役割を明らかにするとともに、コンデンシンIIの負の制御因子として我々自身が過去に同定したMCPH1との関連を探る。
(2)コンデンシンIとIIの比較生化学:現在取り組んでいる各種機能アッセイを完全に確立し、詳細なデータを取得する。これらのアッセイは、カエル卵抽出液を用いた機能アッセイを補完するものであり、両複合体の染色体構築における役割をより深く理解するための基盤を提供することが期待される。
(3)コンデンシン機能の数理モデリングとシミュレーション:クロマチンループ伸長活性およびねじれ活性を持つコンデンシンの力学モデルを用いて、染色体形成シミュレーションを行い、クロマチン繊維のねじれとスーパーコイル構造の染色体形成における役割を検証する。その上で、コンデンシンモーター活性の一方向性と、スーパーコイル構造の蓄積および染色体の凝縮度合の関係を調べる。
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