研究課題/領域番号 |
18H05282
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
熊ノ郷 淳 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (10294125)
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研究分担者 |
奥野 龍禎 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00464248)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | 免疫代謝 / 神経免疫クロストーク / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
生体の恒常性維持には生体システム間相互作用の理解が必須であるが、免疫系、神経系、代謝系の中の2つの系の連関に着目した研究が以下のように近年注目を集め始めていた。本研究では、セマフォリン及びその関連分子を「窓」に、神経系、免疫系、代謝系が相互に連関しながら生体の恒常性を維持する分子メカニズムを解明するとともに、その破綻により生じる慢性炎症性疾患、代謝疾患、悪性腫瘍の病態を明らかにし、これら疾患の診断・治療法の確立に繋がる成果を目指して研究をスタートさせた。2018年度の本研究では、1)神経免疫代謝を司る制御分子による免疫・炎症細胞活性化・分化制御機構の解明、2)セマフォリン関連分子の発現異常の疾患病態への関与の解明とその制御の視点で研究を行い、1)については、mTOR-Sema6D経路を介した細胞内脂質代謝の活性化が抑制性マクロファージ分化時に必須であり、腸炎発症を抑制することを明らかにした(Nature Immunol 2018)。2)については、神経系と免疫系との連関を探索する中で、SLE患者血清でアポトーシス由来のmembrane vesicles (AdMVs: Apoptosis-derived membrane vesicles)にはdsDNAが多く存在し、IFN-I誘導活性があることを発見した(Ann Rheum Dis. 2018)。悪性腫瘍と免疫代謝については、非小細胞肺癌患者に対して臨床的に用いられている抗PD-1抗体を検出する手法を開発した (JCI insight. 2018)。また、肺がん細胞の代謝に関わるmTORシグナルによって誘導されるSema7Aがインテグリンβ1を介したシグナルによって細胞増殖が誘導され、EGFR分子標的治療の耐性化を促進すること発見した(JCI Insight. 2018)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ研究遂行上の大きな問題は生じていないが、一部の遺伝子欠損マウスの交配が予定よりも進まずに十分な解析をできないことがあり、解析用の予算の繰り越し申請を行った。ただ、交配数を増やすことで対処できると考えている。確実に成果の論文化も行っており、おおむね順調に計画は進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度以降も「神経免疫代謝制御メカニズムの解明とその制御」の解明のため 1)神経免疫代謝を司る制御分子による免疫・炎症細胞活性化・分化制御機構の解明 2)セマフォリン関連分子の発現異常の疾患病態への関与の解明とその制御 の2つの視点で、基礎的アプローチと臨床的アプローチを行う。具体的に1)については、免疫代謝に関わる分子のシグナルと相互作用解析について、既に申請者が作成あるいは準備しているセマフォリン関連分子の欠損・変異マウス、mTOR制御分子であるLamtor1 のマクロファージ、樹状細胞細胞特異的欠損マウス、セマフォリンシグナル分子の欠損・変異マウスからマクロファージ、好中球、T細胞を調整して実験に用い、ウエスタンブロット、RNAseq等の網羅的解析との組み合わせで、セマフォリンシグナル解析を行う。2)については、令和元年度以降も自己免疫疾患、神経変性疾患、悪性腫瘍(肺がん)の病態解明についての検討を加える。引き続き、抗好中球細胞質抗体関連血管炎(ANCA関連血管炎)、SLE,多発性硬化症(MS) 、筋萎縮性側索硬化症(ALS) の病態解明を目指した研究を遂行するとともに、悪性腫瘍と免疫代謝についてても、炎症性肺がんモデルマウスなどの各種がんモデルを用いてセマフォリン及びセマフォリン関連分子の病的意義を明らかにしていく。
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