神経免疫代謝を司る制御分子による免疫・炎症細胞活性化・分化制御機構の解明を目的として、基礎的アプローチと臨床的アプローチの融合を積極的に図る中で神経変性疾患のパーキンソン病原因遺伝子LRRK2およびその類縁分子であるLRRK1がsmall G 蛋白質のRab7の活性化制御を介してセマフォリンの生理活性を担っていることを見出した。また、免疫・炎症細胞分化に関わる細胞内代謝変化の解析については、mTOR-Sema6D-PPARγ経路を介した細胞内脂質代謝の活性化が抑制性マクロファージ分化時に必須であり、腸炎発症を抑制することを明らかにした。また、好酸球性副鼻腔炎疾患患者では他の鼻副鼻腔疾患患者よりも有意に上昇しているという結果が得られた。一方、好酸球では患者において有意に膜型SEMA4Dの発現レベルが低下しており、患者好酸球の膜型SEMA4Dが切断され遊離型となることが血中遊離型SEMA4D濃度上昇の原因と考えられた。加えて、SLEは、皮膚、腎臓、肺、中枢神経などが傷害される自己免疫疾患で、核酸に対する自己抗体の産生とI型IFNが疾患発症の原因と考えられている。神経系と免疫系との連関を探索する中で、SLE患者血清でIFN-Iの生物学的活性が高いことを確認すると同時に、アポトーシス由来のmembrane vesicles (AdMVs: Apoptosis-derived membrane vesicles)に着目し、血清中のAdMVsを解析すると、SLE患者由来AdMVsにはdsDNAが多く存在し、健常者PBMCに対するIFN-I誘導活性およびレポーター細胞に対するISG誘導活性があることを発見した。
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