ILC2の抑制機構を欠く肺線維症自然発症マウス(Ifngr1-/-Rag2-/-マウス)を用いることで、内因性因子によって線維化が起こる原理を明らかにすることを目的とした。 Ifngr1-/-Rag2-/-において線維化スコアは10-20週齢群から上がり始め、20週齢以降ほとんどのマウスが線維症を発症した。そこで、未病期、炎症期、線維化期に分けて解析を行うことにした。他の線維化モデルマウス同様、Ifngr1-/-Rag2-/-マウスでは蜂巣肺は観察されなかったが、線維化期にSP-Dの上昇、肺機能の臨床指標の低下がみられた。線維化期のステロイド投与は線維化を改善しなかったが、炎症期に投与すると、線維化を完全に阻害された。scRNA-Seq解析の結果、Col1a1、Col1a2、Col3a1、Timp1、Dcnなど、IPFで報告されている線維化因子を高発現する病的な線維芽細胞が線維化期に増加することが明らかになった。 一方、炎症期には、ILC2、ILC3の増加が認められ、ILC2の中でもIL-13およびIL-33受容体発現が高いサブクラスターが炎症期に出現することが明らかになった。ILC欠損マウス、IL-33欠損マウスをそれぞれIfngr1-/-Rag2-/-マウスと交配させたところ、線維化が発症しなくなったことから、ILC2が線維化発症において重要な役割を持つことが示された。そこで、ILC2と線維芽細胞の共培養を行ったところ、IL-33によって活性化されたILC2のみ、線維芽細胞からのコラーゲン産生を誘導することがわかった。 最後に、IPF患者からILC2を分離し遺伝子発現を調べたところ、Ifngr1-/-Rag2-/-マウス同様、IPF患者由来ILC2ではIL-13およびIL-33受容体の発現上昇が認められ、IFNg受容体が健常人に比べ顕著に低いことが確認できた。
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