研究課題/領域番号 |
18H05290
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
谷口 正信 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00116625)
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研究分担者 |
青嶋 誠 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90246679)
山下 智志 統計数理研究所, データ科学研究系, 教授 (50244108)
阿部 俊弘 南山大学, 理工学部, 准教授 (70580570)
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研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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キーワード | 因果性検定 / 時空間確率過程 / 統計的漸近理論 / 高次元統計解析 / 2値系列 / 判別解析 / 位相データ解析 / パーシステントランドスケープ |
研究実績の概要 |
広汎な観測に対して、一般化因果性指標の導入と、その最適推測論の構築、その膨大な応用をもくろむ研究推進である。本年度は、まず、2次モーメントを持たない安定過程からの因果性解析について、応答行列を用いて、一般化因果性を導入し、経験尤度統計量に基づいた因果性検定を提案し、その漸近分布を明らかにして、有用性を数値的にも検証した。また、安定過程も含む確率過程に対して L^p ノルムでの予測子、補間子を求めることができ、安定過程に対するL^p ノルムでの、因果性導入の基礎研究も前進させた。 位相データに対しては、まず、パーシステントランドスケープに基づく位相指標を用いた実際の金融解析で、国内、米国、欧州の総合指標に適用し、金融危機以前に、この位相指標が、大きく動くことを観測した。この結果は、位相指標に基づいた因果性解析は、将来の予期できない危機への因果性抽出のポテンシャルが期待できることを意味し、今後の該当分野の研究発展への一里塚となった。 高次元時系列解析においては、種々の設定での自己共分散行列の推定や、Whittle 推定量の漸近性質を明らかにした。またこの設定での時系列判別解析での基礎理論構築や、時系列分散分析における古典的検定統計量の漸近分布の導出もでき、福島県の多地域の放射線データに適用された。これらの諸結果は、高次元時系列に対する因果性研究の基礎となる。高次元観測においては縮小推定量が有用であるので、時系列縮小推定量の諸性質も明らかにされた。 時系列観測を 0 と 1 の2値に変換したデータに基づき時系列解析を行うことができる。この場合、情報を失うので、推測の効率は失われるが、種々の頑健性を示すことができた。この流れで、スペクトルに基づく離反度を導入し、これに基づく因果性指標の 推定量から因果性検定統計量が導入できる、これにより、この検定は、外れ値に対して頑健性を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、2次モーメントを持たない安定過程からの因果性解析について以下の進展があった。(i) 応答行列を用いて、一般化因果性を導入し、経験尤度統計量に基づいた因果性検定を提案し、その漸近分布を明らかにして、有用性を数値的にも検証した。(ii) 安定過程も含む確率過程に対して L^p ノルムでの予測子、補間子を求め、安定過程に対するL^p ノルムでの、因果性導入の基礎研究部分もできている。 位相データ解析からの因果性研究では、(iii)パーシステントランドスケープに基づく位相指標を用いた実際の金融解析で、国内、米国、欧州の総合指標に適用し、金融危機以前に、この位相指標が、大きく動くことを観測した。この結果は、位相指標に基づいた因果性解析は、将来の予期できない危機への因果性抽出のポテンシャルを示している。 高次元時系列解析においては、(iv) 観測の次元と標本数に関する種々の設定での自己共分散行列の推定や、Whittle 推定量の漸近性質を明らかにした。(v)またこの設定での時系列判別解析での基礎理論構築や、時系列分散分析における古典的検定統計量の漸近分布の導出もでき、福島県の多地域の放射線データに適用された。これらの諸結果は、高次元時系列に対する因果性研究の基礎となる。 時系列観測を 0 と 1 の2値に変換したデータに基づく時系列解析に於いては、(vi) 情報を失うので、推測の有効性は失われるが、外れ値ロバスト等、種々の頑健性を示すことができた。この流れで、スペクトルに基づく離反度を導入し、これに基づく因果性指標から因果性検定統計量が導入できる。この検定は、外れ値に対して頑健性を持つことが示される。 高次元時系列観測に対する因果性指標の推定量として、当然、縮小推定量に基づいた推定量が考えられる。(vii) 本研究では、時系列観測に対する縮小推定量の漸近理論も構築してきた。
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今後の研究の推進方策 |
位相データ解析からの因果性研究では、パーシステントランドスケープに基づく位相指標を用いた実際の金融解析で、国内、米国、欧州の総合指標に適用し、金融危機以前に、この位相指標が、大きく動くことを観測した。ただ今後の課題としては、なぜそうなるのか?統計理論構築が推進されるべきと思っている。この点に関しては、本研究の研究者だけでなく、国内、国外の位相データ解析の専門家も交えて強力に推進するつもりである。 本年度は、時間依存の確率過程を主に取り扱ったが、医用画像などに対する因果性研究を進めようとすれば、当然、時空間過程に対する因果性の導入とその推測が、必要となる。そこで、今後は、時空間時系列観測に対しても、因果性を導入して、因果性指標の最適推測、最適検定、最適判別分析を進める予定である。これらの諸結果の応用は膨大であるので、国内外の研究者を動員して進める予定である。 2019年度は、この基盤研究(S)で、イタリアのベネベント、ノルエーのベルゲン、台湾の台中、高雄、台南でワークショップを開催して、この基盤(S)研究を海外の関係研究者達と協業する中で、顕現していく予定である。当然、海外の研究者達から多大なコメントと、協力、アドバイスがあるはずである。この中で、本研究を爆発的に進展させる予定である。 また、本研究の成果発表についても、国際誌の1巻を特集号として借りて、成果発表をしたいと思っており、この件の推進も、画策を尽くしたいと思っている。 該当テーマは、極めて広汎なので、経済、医学、環境はいうまでもなく、異分野にも広げて、心理学、社会学、音楽、声楽、等の研究者達と交流する中で、新しい、因果性を見出していきたいと思っている。
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