研究課題
我々は生活環境、ライフスタイルおよび食生活を通じて、タンパク質の求核性官能基への共有結合能を有する親電子物質に複合的に晒されている。欧米において、ヒトの生涯における環境曝露の総体として「エクスポソーム」という概念が注目されている一方で、日本では本研究への着手が立ち遅れている。そこで本研究では、エクスポソーム研究の優先被験物質として親電子物質が取り上げられていることに着目し、環境中親電子物質の複合曝露を実施することで限定エクスポソームのモデル実験を構築した。また、環境中親電子物質はタンパク質の付加体形成をするが、活性イオウ分子により捕獲・不活性化することから、メチル水銀(MeHg)を環境中親電子物質のモデルとして、そのイオウ付加体の生体内運命を調べた。細胞を香菜やタバコの煙に含まれる (E)-2-アルケナール類と大気中に存在するナフトキノン類あるいは1,4-ベンゾキノンに複合曝露すると、(E)-2-アルケナール類の単独曝露に比べて細胞内タンパク質の化学修飾、Keap1/Nrf2経路およびPTP1B/EGFRシグナルの活性化および細胞毒性の閾値は何れも有意に低下した。細胞をマグロ等の大型食用魚類に蓄積するMeHgと環境中に遍在する銅に複合曝露すると、MeHgの単独曝露に比べて細胞内タンパク質の化学修飾、MeHgのイオウ付加体生成に起因する臓器中活性イオウ分子の消費、細胞内水銀の蓄積および細胞毒性の閾値は何れも有意に低下した。マウスに同様な処置を行なっても、協調運動の低下、急性致死効果および胎児の肝臓中水銀蓄積に関する閾値は何れも有意に低下した。MeHgのイオウ付加体である(MeHg)2Sは、生体内で徐々に分解してジメチル水銀と硫化水銀が生じることが明らかとなった。生成したジメチル水銀は揮発性が高く、呼気を介して体外に排泄されることを世界で初めて発見した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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