まず、行動データを対象とした語彙処理の計算認知科学について、英語の派生に関する語彙判断課題の計算シミュレーションをニューヨーク大学およびペンシルバニア大学の研究者と実施し、研究成果を国際学会NAACL CMCLで発表・出版し、Best Paper Awardを受賞した。また、日本語の動詞屈折に関するwugテストの計算シミュレーションをニューヨーク大学およびロンドン大学の研究者と実施し、研究成果を国際学会ACL SIGMORPHONで発表・出版した。更に、形態素順序と異形態に関する人工言語学習実験をエディンバラ大学の研究者と実施し、研究成果を国際学会CogSciで発表・出版した。 一方、脳活動データを対象とした語彙処理の計算認知神経科学について、英語の派生に関するMEG実験と計算シミュレーションをニューヨーク大学の研究者と実施し、研究成果を国際学会に投稿準備中である。また、日本語の動詞派生に関するMEG実験をニューヨーク大学の研究者と実施し、予備的な研究成果を国際学会で発表したが、まだ計算シミュレーションには着手できていない。 これらの実験的研究に加えて、理論的研究も同時に遂行しており、分散形態論という形態理論に関する招聘シンポジウムを日本英語学会で企画し、そこでの導入に基づいた概説論文が国際ジャーナルEnglish Linguisticsの特集テーマとして採択された。また、日本語の補充に関する理論的分析を分散形態論の枠組みで実施し、研究成果を国際学会WAFLで発表・出版した。 以上、語彙処理の計算認知科学について、実験的および理論的研究の両者で十分な研究実績を上げることができたと考える。今後は、フンボルト大学の研究者とドイツ語の名詞派生、東国大学の研究者と韓国語の動詞派生に拡張し、人工ニューラルネットワークも検証しながら、国際ジャーナルに投稿する計画である。
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