研究実績の概要 |
本研究は,wh疑問文の理解や口頭で答えを産出する時に「いつ」,「どこで」,「どの順序で」脳活動が起こるのかについて,高い時空間同定精度をもつ皮質脳波によって検証した。被験者は薬や食事療法による治療が困難な難治性のてんかん患者を対象とした。皮質脳波の電極を脳外科手術の後,大脳皮質上に留置し,てんかん発作に関連した部位の特定,言語機能関連部位の特定を行なった。皮質脳波実験のデータ解析では,時間周波数解析を行ない,「いつ」,「どこで」,「どの順序で」脳の活動が起こるのかを,10ミリ秒単位の時間精度によって特定した。本研究は,難治性てんかん患者を被験者として,研究施設における倫理委員会の承諾を得た上で行なった。実験で用いる音声刺激は,実験者が男性の音声をICレコーダーで録音し,音声編集ソフトで各刺激を編集した。実験課題において,患者はスピーカーから呈示されるwh疑問文を聴き,口頭で答えを産出した。ビデオ脳波計によって,実験中の皮質脳波のデータ,音声,動画を記録した。皮質脳波のデータ解析では,脳波計測解析ソフトNeurofaxによって脳波計測と脳波解析(刺激の呈示時間,被験者の発声時間の特定)を行なった。電極を留置した脳部位は,MRI装置で撮像した脳構造画像を脳構造解析ソフトFreeSurferによって三次元化することによって特定した。また,脳波解析ソフトBESAによって脳表に留置した各電極で計測した脳波を時間周波数解析によって特定した。特に本研究では,言語活動を反映する高ガンマ帯域の脳活動を各脳領域から抽出し,刺激呈示が行なわれていない安静時の脳波と比べ,wh疑問文を理解している時,答えを口頭で産出している時に,有意に脳活動が上昇した領域(e.g., 上側頭回,中心前回,中心後回)を統計検定によって特定した。
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