本研究課題は、サウジアラビアにおける女性の高等教育への進学と卒業後の進路選択の関する意識と行動を明らかにすることを目的とした。今年度は、進路選択に焦点を当て、彼女らの就労意欲と卒業後の進路とその目標達成への自己効力感(Self-efficacy)について、アンケート調査とインタビュー調査データから分析を試みた。今年度の研究実績は以下の通りである。 彼女たちは高等教育修了後の就労に関して、きわめて高い意欲を示しており、就労意欲における男女及び専門分野(文理)の差は確認されなかった。また、自己効力感を分析したところ、就労意欲と同様、その目標を達成することにも強い自信を持っていることが明らかになった。しかし、サウジアラビアの労働市場における女性の割合は低いままで、彼女らの就労意欲と就労目標達成に関する自己効力感は実際の現状とはかけ離れている。今後、労働市場参加への高い意欲と自信を持っているにもかかわらず、実際にはなぜ労働参加がなされないのか、その進路選択における「状況的」・「積極的」理由を明らかにすることがさらなる課題である。加えて、本年度は国際比較の視点から日本の大学生調査(早稲田大学のアンケート調査)の分析も進めた。 上記の研究成果は、それぞれ国内・国際学会で発表した。サウジ女性の高学歴化の現状と彼女らの就労意識と自己効力感についてはスペインで行われた5th World Congress for Middle Eastern Studiesにてポスター発表し、サウジアラビア男女における進学と就労意欲の差に着目した分析は日本教育社会学会第70回大会にて発表した。
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