研究実績の概要 |
本研究は、日本とノルウェーの比較研究を通じ、多文化共生に資する教員養成プログラムや教員の支援のあり方を明らかにすることを目的としている。2018年度は文献を中心とした研究に加えて、教員養成における学生と教員の共生意識にかんする第一次調査を実施した。 まず、教員養成、移民の社会統合、シティズンシップやナショナル・アイデンティティをテーマとしたものを中心に、日本とノルウェーにおける多文化社会と教育にかんする文献を収集し、現況および課題について分析した。加えて、調査枠組みおよびデータの分析枠組みの設定のため関連文献を収集・分析し、「社会正義志向の教員(teachers for social justice)」(Cochrah-Smith, 1998) および批判的人種理論に基づく Martell (2017) の分析枠組みを仮に援用することとした。 また、文献の分析結果を踏まえ、オスロ・メトロポリタン大学の教員養成コースを対象とした予備調査を実施した。3月20日から31日までノルウェーの首都オスロに滞在し、同大学において教員養成課程の担当教員および学生にインタビュー調査を実施したほか、文献収集をおこなった。それに加えて、ヨーロッパで民主的シティズンシップ教育を推進しているEuropean Wergeland Centreを訪問しプロジェクトについて聞き取り調査を実施したほか、2011年に起きたテロ事件にかんする資料の展示と啓発・教育活動をおこなっている22 July Senterで教育事業の見学と聞き取りを実施した。さらに、オスロの貧しい地域で移民コミュニティを支援しているNGOや教会系の団体を訪問し、取り組みについて調査をおこなった。また、近郊のドランメン市の移民系生徒の多い中学校を訪問し、授業の見学および関係者への聞き取りを実施した。
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