石油や揮発性有機化合物などの非水溶性液体(NAPL)は、地中で複雑な多相の流れを形成して土壌汚染を引き起こす。このような土壌汚染を水-NAPL-空気3相の浸透解析で検討する際は、土粒子間隙における3相の圧力-飽和度関係のモデル化が計算の信頼性を左右するが、圧力-飽和度のモデル化に広く用いられているLeverettの仮定は、NAPLの種類などの条件によっては適用できず、地盤内のNAPLの残留量を過小評価する問題が指摘されている。そこで本研究では、中間流体圧係数と残留NAPL飽和度との関係性について熱力学的に考察することで、Leverettの仮定の適用限界を克服した圧力-飽和度モデル化手法を提案し、それを組み込んだ新しい土壌汚染開発技術を開発することを目的とする。 圧力-飽和度関係のモデル化にあたって、間隙内を流れる水、NAPL、空気の3相を数値解析により微視的に観察するために、Material Point Method(MPM)を用いた数値解析技術を開発した。MPMは地盤の大変形問題などに近年適用化が進められている解析手法であるが流体についても適用可能である。さらに本研究では、2つの連続体の接触特性を考慮したMPMを開発した。 通常、地盤の浸透問題はダルシー則に基づいて有限要素法などで解析されるが、この場合、得られる各相の流速は平均化された流速であり、土粒子の間隙内に流れる流体を直接解いてはいない。本研究で開発した数値解析技術を用いれば、任意形状の剛体と流体との接触特性を考慮することができるため、今後、界面張力や粘着力について考慮することで、剛体としてモデル化した土粒子の間隙内を流れる流体の移動機構について検討を進める予定である。
|