研究課題
本研究はグラフェン/SiC界面への水素侵入の機構解明の研究を遂行した。本研究で用いる熱放射光学顕微鏡を実際に研究を実施する原子力研究開発機構に移設した。また、SiC試料を加熱するための試料ホルダーを作製し、SiC表面とグラフェンの界面に存在する共有結合が水素侵入によって切断されグラフェンが形成する過程のその場観察を行った。水素雰囲気下で加熱中のSiC試料の表面を反射光を用いて観察したところ、SiCのステップに由来するコントラストが観察されたことから、試料ホルダー及び光学系は問題なく構築できたことがわかった。また、グラフェンが形成する間に熱放射光のコントラストが得られなかったことを確認した。これは観察に用いたCMOSカメラの観察波長がバッファ層のバンドギャップである1eVの熱放射光に対応していないためであり、当初の研究計画の通り、近赤外線カメラの導入が必要であることがわかった。更に、本研究の対照実験としてAu基板上にグラフェンを作製しグラフェン/Au界面と水素の相互作用についても研究を行った。その結果、特にAu(100)表面においてHex-Au(100)の再構成を生じた場合にグラフェンのバンド構造が変調を受けグラフェンの熱放射強度が低下することが示唆された。この結果は、グラフェンの熱放射光強度がバンド構造の変化に敏感であることを示しており、グラフェン/SiCの系においても水素侵入に伴う構造変化が1eV以下のエネルギー領域においてバンド構造を変調させれば、近赤外線カメラによってコントラストの変化が観察可能であることを示唆している。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Japanese Journal of Applied Physics
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