本年度では実質の活動期間が3ヶ月という短期間ではあったが、(1)以前行ったMorbidostatを用いた、複数の抗生物質を同時投与する環境での薬剤耐性進化実験のデータ解析、(2)薬剤耐性進化のモデリングのための確率モデルの検討、(3)将来の共同研究に向けた海外研究者との連携、を主に行った。 (1)に関しては以前に得られた、複数の抗生物質を交互に投与するAntibiotic Cycling(AC)と呼ばれる環境下での進化実験との比較のため、以前と同様の抗生物質を用い、同時に投与する環境下で大腸菌がどのような進化パターンを見せるか解析したところ、ACでの進化同様、ある薬剤に対する耐性が全く進化しないという特異なパターンが見られたが、同じ抗生物質ペアでもACとは逆の耐性進化パターンを見せることがわかった。(2)では確率的な進化現象を薬剤耐性の進化パターンからモデル化するため、株式市場などのモデルに用いられているARIMAや状態空間モデルなどの確率モデルを用いてモデル化することを検討した。(3)また、実験室内での進化させた微生物だけでなく、自然環境における薬剤耐性菌の理解と解明のため、アジア工科大学(AIT)のThammarat Koottatep教授、Chongrak Polprasert教授らの研究室を訪問し、浄化槽における薬剤耐性菌のサンプリングと同定に関する共同研究を進めるための準備を行った。また、この研究はAITの2教授、グラスゴー大学のWilliam Sloan教授、Stephanie Connelly講師らとの共同研究として今後進めていくことを企画している。
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