研究実績の概要 |
哺乳類アレナウイルスにはラッサウイルスのように、ウイルス性出血熱を引き起こすものが複数含まれる。これまでに、ラッサウイルスに近縁のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスを用いた実験で、ウイルスゲノムの遺伝子間領域(intergenic region, IGR)に由来するmRNAの3'UTR配列が翻訳効率を制御することを見出した。本研究ではIGR配列によるウイルスmRNA翻訳制御機構の分子メカニズム解明を目的とした。 ウイルスmRNA 3'UTRの翻訳における役割を解析するために、in vitro転写系を用いて作製した合成ウイルスmRNA(vmRNA)をヒト培養細胞(293)にトランスフェクションし、レポータータンパク質の発現効率を比較する系を確立した。これにはまず、レポータである蛍光タンパク質ZsGreen(ZsG)遺伝子の上流および下流にウイルスmRNAの5'UTRと3'UTRをもち、さらに5'cap構造が付与されたvmRNAを作製した。コントロールとして、3'UTRにpolyAを付加した合成細胞mRNA(cmRNA)を作製した。これらの合成RNAを用いて、高いZsG発現を得るためのトランスフェクション条件を検討した。次に、vmRNAの5'UTRや3'UTR配列を、翻訳効率の高いヌクレオカプシド(NP)mRNAや、翻訳効率の低い糖タンパク質前駆体(GPC)mRNAのものと入れ換えたキメラvmRNAを作製し、ZsGの発現効率を比較した。その結果、われわれの以前の報告と一致して、in vitro転写系で作製したvmRNAの翻訳効率は3'UTRの配列によって決定されることが明らかとなった。さらに合成vmRNAの3'UTRを段階的に短くしていき、ZsG発現効率を比較することで、効率的な翻訳と3'UTR長との関係を明らかにした。
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