IPMNは、画像による主膵管径や壁在結節の有無などの形態学的評価を主体とした良悪性診断が標準的に行われているが、ガイドラインに基づき当院で切除を行った68例の悪性診断精度は6 割程度であり、切除後に悪性ではなかった、またすでに予後不良な浸潤がんであったと判明することも少なくないのが現状である。 本研究の目的は、IPMN患者の血漿および膵液中のエクソソーム(細胞外小胞)を、標準的な超遠心法に比較して、ハイスループット性、回収率、コストの面で優れたdisposableなカラムを用いた“Size exclusion chromatography(SEC)”による手法により分離、回収し、その中に含まれるmicroRNAの解析をqPCR により行い、悪性診断に有用なマーカーを同定することである。 本年度は、まず血漿、膵液からSECによるエクソソームの抽出を行い、回収したエクソソームの質的、量的評価、つまり、透過型電子顕微鏡による存在、形態評価、Immuno-blottingによるCD63、CD9、TSG101、Calnexinの発現評価を中心に行った。以上から、これら検体からエクソソームを回収できることを確認した。さらに、これら検体からRNAの抽出を行い、Bioanalyser2100によりsmall RNAが回収できていることを確認した。当初、さらにCancerパネルを用いたqPCRによるmiRNAの解析を予定していたが、2例の症例に関して、miRNAの網羅的解析を行い、膵液中からもmiRNAを多数検出できることを確認した。 来年度は新たな研究資金を確保できたため、さらに症例を増やして目的達成のためにすすめていく予定である。
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