本研究の目的は、電気刺激と機械刺激の併用で、指先にあらゆる触感を再現するためのアルゴリズムの開発である。本研究は、次の3つ項目で研究を行った。まずは、電気刺激の閾値の安定化である。皮膚感覚受容器を活動する電気刺激について、物体の形状を提示するために、電極が配列として作られている。しかし、位置により皮膚の厚みやインピーダンスが異なるため、各電極の電流閾値が空間的に変わる。本研究では、電極配列を囲むグラウンド電極により、空間的に電流閾値の変化が有意に減少することを確認した。 二つ目は、多指に粘着感を提示する手法である。粘着感の再現は、触覚分野において非常に重要であるが、小型な電気刺激装置で提示可能な手法はまだ発見されていなかった。これまでの本研究では、人差し指に粘着感を提示するために、指先の皮膚感覚と指の屈筋腱を同時に刺激する手法を提案した。しかしこの手法について、指の一本しか確認できなかった。本研究は、この手法に基づいて、拇指、示指、および中指の多指の屈筋腱を刺激する方法を見出した。 三つ目は、リアルタイムで触感を伝送するアルゴリズムの試作である。触感送信側では、親指と人差し指で物体を操作する時に、これらの指に装着した圧力分布センサで物体の触感を測定する。受信側では、電気刺激の刺激点と強度は圧力分布の値に対応し、機械刺激の振動波形は圧力の最大値の変化と比例することにした。六角形鉛筆のスクロール感覚や親指と人差し指の間のタッピング感覚を伝送し、体験者のコメントにより本アルゴリズムを改善している。
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